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【匠】現場マネージャーとフェロー萩本氏 討論会 (前編)

現在のビジネスへの危機感と要求開発への期待 ~NDS幹部マネージャー達のIT業界先駆者となる想い~

日時 2009/8/25 (火) 10:30~12:00
場所 NDS本社 研修室
参加者 萩本順三氏(NDSフェロー(株)匠BusinessPlace(以下、匠BP)代表取締役 要求開発アライアンス 理事)
荒井シニアマネージャー、藤本SB事業推進統括
山本マネージャー、荒木マネージャー

萩本フェロー

萩本フェローを中心にNDSの幹部のマネージャー陣がここに集結。 担当するマーケットと日夜格闘するマネージャー達が現状打破に頭を悩ませています。そこで萩本フェローが推進する要求開発が颯爽と登場しマネージャーの熱い思いを受け止めます。

各マーケットの現状と危機感

山本マネージャー

萩本F 今回は実際の現場でプロジェクトを動かしている皆さんの中で、要求開発にどう取り組んでいるか、要求開発がどう見えているか。その点をお互い情報共有をしたくて集まっていただきました。あとは要求開発をビジネスにどうつなげるかという、一番重要な部分を意見交換して一緒に考えていきたいと思います。
山本 大手SIベンダーの民需系マーケットを担当しています。設計から製造、運用保守といったパートをNDSの歴史と共に得意としてきました。しかし厳しい経済状況やベンダーの世代交代といった外的要因により、厳しい状況であると認識しています。やはり他社との差別化が課題となっています。
萩本F そうですか。IT業界に多く見られる状況ですね。
山本 ここ数年SIベンダーから上流工程やユーザー対応を要請されてはいるのですが、経験不足から踏み込めていない状態です。要求開発が教科書になってくれればと期待しています。
萩本F 私も長くそのような状況を見てきて試行錯誤してきました。その上流工程に取り組むことが要求開発なのです。皆さんの道標になるべく具体的な方法論を匠メソッドとして育ててきました。教科書というより実践でどんどん活用して欲しいと考えています。
山本 萩本さんは考え方だけではなく、具体的な方法まで確立されているので我々も取り組み易いですよね。
荒木 私は同業他社との協業や自社製品開発などのマーケットを担当しています。取引先のキーマンから要求をまとめるところは現場で体制が固まっていて、他社の入り込む余地は少なくなっています。我々がそこに入り込むにはどうすべきかが課題になっています。
萩本F 無理にねじ込むという話しではなく、まずはNDSの取り組みを価値あるブランディングとして確立させる必要があります。
荒木 そうですね。 我々が要求開発に真剣に取り組んでおり、そこに価値があることを立証していかなければ注目もされませんしね。
萩本F 要件定義をNDSに発注するのでなく、お客様の要件定義の中にNDSを受け入れてもらう。その為にはNDSは何ができるのか、どういう価値があるか、お客様に理解していただかなくてはいけませんよね。
荒木 我々は道具なんですよね。お客様が欲しがる道具としてまずその有効性を実証すべきなんですね。

荒木マネージャー

藤本SB事業推進統括

藤本 私は数年前にオフショア開発が流行りはじめた時に危機感を感じベンダーとNDSの生き残る道に関して膝を突き合わせたことがあります。キーワードは「より上流へ」、「よりデバイス(専門化)へ」でした。 モデリングされたものはオフショア担当で良く、上質のモデリングにはコミュニケーション力と試行錯誤が伴うもので、我々の道はそこだと思っています。意識が変わり改善も評価にもつながってきてはいますが、ビジネス価値にまで発展できていないことが悩みです。
萩本F それは匠BPと同じ方向性ですね。やはり単なるモデリングではなく、価値を表すレベルでのモデリング力を身に付けることが重要なポイントになります。
藤本 従来 NDSでは個人のノウハウや継承、組織力で対応し「良い物を作ってくれる」という評価は頂いてはいるのですが。
萩本F 匠BPでは匠メソッドとは別に、今後の業界の契約モデルを示そうとしています。サービスを形にしてお客様に価値を評価して頂くことが肝要です。そうして自分達の価値を「見える化」して高めていくのです。
藤本 それと仕事そのものが減少する傾向にあり、従来の大量生産するような仕事は確実に無くなると考えています。ただ目先のビジネスに拘ればまだあるとは思いますが。5年、10年先を考えると明るいビジョンは描けない。
荒井 確かに今のビジネスも数年は持つと思いますが、その後は厳しいと私は認識しています。
萩本F 私は現在のビジネスの価値は、今後は下がると感じています。価値が下がれば単価が下がります。結果的に質が下がり、もはやプロ集団と言えなくなります。そのような状況でお客様に高い価値を供給することは困難です。業界の未来の為に皆で意識を変えていくことが急務となります。私は業界の意識を変えることを使命と考えています。
荒井 大手SIベンダーで官庁系と制御系の分野を担当していますが、どうにか工数仕事で食べていける程度です。技術的にNDSでないと困る、というものではなく「臨機応変な粘り強さ」で評価してもらっています。
萩本F 姿勢を評価されているわけですね。
荒井 そうですね。しかしNDSではソフトウェアを作ることに特化し、ビジネスの視点で考えること、描くことができていないことが問題だと実感しています。やはり自分達のシステム開発能力の価値を顕在化させることができないといけない。そこで出会ったのが「要求開発」です。
萩本F なるほど。私は常々IT企業がソフトウェア開発という狭い範囲の中で価値を出そうとしていることに疑問を感じていました。要件定義されたものをつくるのではなく、我々が要件定義を描くことが大切です。システム開発能力を携えた我々こそがお客様にITの最大限の価値を提供することができます。そうすれば必ずやIT業界は活性化します。
荒井 まさに「要求開発宣言」の源ですね。

荒井シニアマネージャー

目指すべきは上流工程

萩本F 私はここ数年上流工程を目指しましょうとIT業界に言い続けて来ました。
藤本 その「上流」を目指すには若干の違和感を感じています。「中流」にも「下流」にも価値があっても良いと思うのです。その価値が人月でしかないことが問題なのです。例えば「私が5分で作り上げたプログラムの価値が百万円です」という仕組みがあったらと常々考えています。
萩本F それはIT業界の皆が感じていることですね。
山本 我々も開発するシステムの価値を人月以外で算出する方法がなく、結局価値として人月になっているのでしょうね。ただ、一括請負受託型だと見方が変わるかも知れません。
荒木 一括であろうとなかろうと規模で計る限り人月になるのが現状ですよね。お客様が得る利益から、利益配分として対価を頂く形が理想になると思う。そうなるとビジネスそのものが変わってきますよね。
山本 現状でもビジネスを変えるチャンスはあると思う。
萩本F 実は問題点は2つあるのです。

萩本F 1つ目に問題は、各層に於ける分断されていることだと考えます。私は①のビジネス戦略は②~④への手探りや逆に突き上げが不可欠と考えています。ところが各層が分断されており、適切な価値が生み出せていないのが現状です。今迄SIベンダーが目指していたのは開発の上流工程の③。それではビジネスの価値を効果的に生み出せません。
荒井 NDSにも提案が行える人材が必要な訳ですね。
山本 ちょっとずつでも上がっていきたいですよね。
萩本F 提案主導に変えていくためには提案自体の妥当性や価値を検証する段階が必要な訳ですが、ここが今IT企業もユーザ企業もプロフェッショナル化されていない。
荒井 その方法論が匠メソッドなのですね。
萩本F そうです。私の目指すところはシステム要件の領域にいるIT技術者が匠メソッドという武器を携え、①の領域で活躍することです。お客様と一緒に価値を見出すこと。価値は戦略に存在しているわけではなくて、具体的な戦略と、具体的な実現方法の線上に価値が存在しているから、どれを狙ったとか、どういう風にチューニングするかとか早い段階で決めないといけない。
荒井 ①の領域に食い込むことに新しいビジネスがありそうですね。

ITエンジニアに必要なスキルは描く力

山本 社員にどうやって浸透させられるか。要求開発を大きいイメージでしか見えていない。いきなりシフトって難しそうですね。
荒井 今のプロジェクトの中で、プロセスの改善やビジネスの見える化とか、要求開発の手法をそのまま使っていてだんだん浸透してきている。急には染まらないかも知れないけど、出来るところから確実に力をつけて色が付いていく。トップダウンで決めること、ボトムアップでやること、そこに共有というロジックを加えることで盛り上がっていくものと考えている。
萩本F 地道な活動で見える化する方法を覚えながら、自分達の形を表現することが重要です。 
荒井 ファーストコンタクトを行い知識は得た。これから社員に要求開発ってどうやるのかというところを強化していかなければならない。
藤本 社員としては、なんとなくわかった。で会社はどうなるんだろうという地点に居る。
萩本F どうなるかではなく、どう描くかです。先に描くことが大事なんです。皆さんの頭にあるイメージを皆で意見をぶつけあって形にしなくちゃ駄目なんです。見える化しなきゃ先に進めません。見える化というのは書くだけではなく描くことなんです。描くこととは、絵のデザインの事ではありません。大切な事を多くの人に伝えるための、「ビジョン」、「コンセプト」、それらを示す「言葉の発明」、「言葉の意味づけ」、そしてイメージ(ロゴ・図等)、これらを形成していくことなのです。
山本 作ることに必死で描く技術がない。一歩踏み込んで取り組んでいかないと。
藤本 描く力はどうしたら。
萩本F 開発とは頭の使い方が違いますのでトレーニングが必要です。
荒井 トレーニングで身に付きますか?
萩本F 確かに向き不向きはあるけれど、そういう考え方が必要だと思っていないから出来ていないだけです。考え方を変えないと。
藤本 描く力なんですがコンセプトがしっかりすれば描けると考えても良いのでしょうか。
萩本F やはりコンセプトを語れる人を増やしていくことが大事。全てが試行錯誤です。自分の中で最初からこういうものがあった訳ではなく、自分のやっていることを絵にするとこうだったというだけなんです。少なくとも私が要求開発を軸にして匠メソッドに挑戦して皆さんとビジネスの戦略を決めていく時に強く感じたのは作ることと描くことは違うということですね。
一同 伸ばすべきスキルは描く力ですね。
~前半戦を終えて~

萩本フェローのバイタリティに押されっぱなしのイメージが強いマネージャ陣ですが後半戦に一気に盛り返します。このままでは終われません。皆さん百戦錬磨のスペシャリスト。そして職人気質。納得するまで引き下がりません。お客様に評価して頂いてなんぼの商売です。とことん拘っていきます。 次回は中島統括マネージャーもフル参戦します。

次回の討論会をお楽しみに。

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