勤怠管理コーヒーブレイク

有給休暇の取得が義務化へ。企業がすべき対応

平成31年4月より年次有給休暇の取得が義務化され、企業は社員に年5日の有給休暇を寄与することが不可欠となります。
この義務化となったいきさつや義務化によって企業に起こりうるリスク及びその対策などを紹介します。


年次有給休暇の取得が義務化される理由


本格的なスタートを迎えようとしている、働き方改革。年次有給休暇の取得が義務化されるのもこの一つです。
なぜ義務化されるのか。その主な理由を解説します。


日本企業の年次有給休暇の取得率は49.4%

(参照:平成 29 年就労条件総合調査の概況|厚生労働省)

第一に日本企業の年次有給休暇の取得率が低いことが挙げられます。
厚生労働省が公表した平成29 年「就労条件総合調査」の結果によりますと、
1年次有給休暇の取得状況は、
   平成28年1年間の年次有給休暇の付与日数は  18.2日
   そのうち社員が取得した日数は         9.0日 >> 取得率は49.4%
でした。年次有給休暇を取ることは働く人に付与される権利なのですが、いまだ半分も取っていないというのが現状です。


大企業でも年次有給休暇の取得率は55.3%

(参照:平成 29 年就労条件総合調査の概況|厚生労働省)

平成29 年「就労条件総合調査」では年次有給休暇の取得率を企業規模別にも分類しています。
  社員規模1,000人以上の企業が   55.3%
  社員規模300~999人までの企業が 48.0%
  社員規模100~299人までの企業が 46.5%
  社員規模30~99人までの企業が  43.8%  の取得率となっています。
社員規模1,000人以上、いわゆる大企業でも年次有給休暇の取得は半分を越えた程度なのです。


日本の有給休暇消化率は世界30カ国中ワースト

(参照:有休消化率2年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2017|Expedia)

世界的な旅行サイトExpediaが世界30の国で実施した「有給休暇・国際比較調査2017」。外国企業の年次有給休暇の消化率を比べると日本は圧倒的な低さで最下位です。例えば最上位に挙げられているブラジル、フランス、スペインは有給休暇の支給日数が30日、消化日数が30日でなんと消化率100%です。


社員はもちろんパートタイマーまで対象

このような理由から働き方改革を推進する上で年次有給休暇の取得率の向上を図ろうと法案(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」)が策定されました。概要は「使用者は、10日以上の年次有給 休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。」というものです。社員のみならず年次有給休暇の日数が10日以上付与されるパートタイマーやアルバイトなども対象となります。年次有給休暇の取得義務化は平成31年4月からの施行となっています。



有給休暇が取りにくい原因


勤勉な国民性といわれる日本人。たとえば定時退社できるのに周囲が残業しているとつい躊躇したり、そんな経験をされた人は多いと思います。いまだに勤労は美徳であり、休むことに対しては何となく後ろめたさを感じてしまいがちです。なぜ有給休暇が取りにくいのか。次のようなことが原因と思われます。


社内で積極的に有給休暇を取らない

休みたいが誰も有給休暇を取らない。有給休暇を自分一人が取ると社内の和を乱すことにならないか。社内の空気を気にしてなかなか取れない場合、社内環境が問題です。


有給休暇を取ると受け持っている仕事に穴が開く

仕事量の多さもありますが、担当者でなければその業務を遂行することができない。いわゆる業務が属人化していては有給休暇を取ることは困難です。


査定でのマイナス判断材料になるのでは

有給休暇を取ると査定に悪影響を与えるのではないか。そう思って取らないとしたら、その誤解を解くようにしなければなりません。労働基準法第136条では、「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはいけない」と有給休暇取得による不利益取扱いが禁止されています。



年次有給休暇の取得義務化によるリスク


企業にとって年次有給休暇の取得義務化で生じるリスクにはこのようなものあります。


業務や業績に影響を及ぼす可能性も

厚生労働省の「平成28年就労条件総合調査結果」によると、これまで有給休暇取得率の低かった業種は宿泊業・飲食サービス業、卸売業・小売業、建設業です。これらの業種の社員や中小企業で働く人には年次有給休暇の取得義務は有意義な制度です。しかし、常に人材不足に悩むこれらの企業にとっては社員を休ませながら業務を継続することは大きな課題です。年次有給休暇の取得が義務化される前にいかに業績を維持さらに向上していくために業務体制の見直しや改善を行なうことは必須です。


年次有給休暇の取得義務化による仕事へのしわ寄せが

人員に余裕のない職場で働いている人ならば、有給休暇を取ることでその間の仕事が山積してかえって忙しくなるかもしれません。リフレッシュが目的の休みを取ることが本末転倒になりかねません。こちらもやはりいかに社員が休みが取れて休み明けもストレスを感じることなく働ける、そんな環境の整備が企業側に求められます。



有給休暇の取得義務化への企業の対処法

企業は有給休暇の取得義務化に対してどのように対応すればよいのでしょう。また社員の有給休暇取得率をアップさせる具体的な対策を紹介します。


●トップや管理職が自ら有給休暇を積極的に取る

率先垂範して管理職が有給休暇を取るようにする事です。上司が有給休暇を取れば社員も遠慮なく取れるようになります。


●業務内容を平準化、業務の可視化を図る

有給休暇を取れない理由の一つに自分の仕事を代わりにできる人がいないことを挙げました。この“自分にしかできない業務”、業務の属人化を解消することが有給休暇の取りやすさにつながります。その人が休んでも業務に支障を来たさないように業務内容を共有、平準化しなければなりません。そのことは組織を強くしてさらに業務の効率化を実現します。


●企業が計画的取得の旗を振る

年次有給休暇5日の取得義務化を契機に会社側が社員に有給休暇を計画的に与えるようにするのも取得促進の一つの手立てです。厚生労働省の「年次有給休暇ハンドブック」では下記のような 事例を取り上げています。
〇飛び石連休の谷間の平日を有給休暇にして大型連休にする
〇製造業の場合、工場の閑散期に生産計画などに合わせて有給休暇を一斉に取る
〇夏季休業、年末年始に有給休暇を与えて長期休暇にする
など企業が有給休暇を積極的に且つ計画的に取得できるような環境つくりが必要です。



有給休暇が取りやすいことはES(従業員満足度)をアップさせる


CS(顧客満足度)という言葉は定着しましたが、真のCS向上を目指すには、まずES(従業員満足度)の向上からといわれています。ESが目標とするのは社員が働きがいを感じる働きやすい職場環境づくりです。そこで社員のモチベーションがアップしてよりいきいきと仕事に励むようになります。生産性やサービス性なども高まり、最終的にお客さまに還元され、CS向上に繋がります。このES向上に有給休暇取得は大きな要素を占めています。誰もが望むときに休みが取れる会社。ESの高い会社=(イコール)社員の定着率が高い会社です。お客様第一、社員第一、このポリシーで各企業はCS向上ならびにES向上に取り組んでいます。



まとめ


年次有給休暇の取得義務化についてご紹介してきました。5日の有給休暇を必ず取らせることで取得率の向上を目指すものです。よく働いてよく休む。まさに働き方改革の核心をついたものです。施工される前に業務の平準化などの業務改善も怠りなくしておきましょう。ここからワークライフバランス達成への第一歩がはじまります。