勤怠管理コーヒーブレイク

勤務間インターバル制度とはどんな制度? 目的は?

働き方改革のひとつに、勤務間インターバル制度があります。ワークライフバランス推進の一環として、2017年には厚生労働省による助成金も設置されました。この制度の特徴や海外と日本との違いやメリット、助成金の内容などを取り上げます。



勤務間インターバル制度とは


勤務間インターバル制度とは、”時間外労働などを含む1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバルを保障することにより従業員の休息時間を確保しようとする制度”です。
現在、厚生労働省が先頭に立ってこの制度の導入及び普及に努めています。


                 (引用:厚生労働省 労働基準局「勤務間インターバル」とは)



EU諸国では勤務間インターバル制度は導入済み


勤務間インターバル制度は、一定の休息時間を確保することで、実質的な労働時間を短縮することが狙いです。EU諸国ではいち早く導入されている制度です。1993年に制定されたEU労働時間指令では、24時間につき最低連続11時間の休息を与えることが義務付けられています。例えば、9:00始業、17:00終業の企業で、17:00から24:00まで残業した場合、その11時間後の翌日の11:00からが始業時間となります。9:00から11:00までは休息時間となり、勤務してはいけないと定められています。



勤務間インターバル制度を導入している日本企業は1.4%


ただし日本ではいまだ法令化されてはいません。勤務間インターバル制度に類似しているものとして自動車運転安全基準があります。これは自動車運転者については勤務終了後に継続8時間以上の休息期間を与えなければならないことなどが定められていますが、圧倒的に人数が多い一般労働者の休息時間の確保について定めた規制はなく、EU諸国と日本の労働時間の差は一向に縮まる気配はありません。ここ数年長時間労働や過重労働による過労死などが大きな問題となっています。労働者の暮らしと健康を考えて労働環境の改善こそ、働き方改革の根幹を成すものといえます。その中で勤務間インターバル制度が脚光を浴びて、日本でも導入する企業が増えてきました。しかし、厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」によりますと、この制度を導入している企業はいまだ1.4%です。



日本企業の勤務間インターバル制度導入事例  【大手電気通信会社A社】


社員の健康管理を目的として2015年から導入

勤務間インターバル制度代表的な導入事例として草分け的企業A社を取り上げます。


長時間労働の解消が課題

A社はコールセンターや業務上、長時間労働をなくすことができないことが長年の課題でした。勤務間インターバル制度ならばこの課題が解消できるのではと日本企業のさきがけとして導入しました。


11時間のインターバル確保だけでは現状に合わない

EU加盟国で義務付けられている11時間のインターバル確保が国際標準ですが、A社では11時間のインターバル確保だけでは現状にそぐわないことがわかりました。例えば朝9時出社すると午後10時に退社しないと11時間のインターバル確保できません。ところが、繁忙期にはどうしても午後10時以降も仕事をしなければならないことがあるのです。


独自の11時間と8時間のインターバル

A社では
   ・安全衛生管理規定による社員の健康面を考慮した11時間のインターバル
   ・就業規則による社員の就業時間を考慮した8時間のインターバル
この2本のインターバルで自社にマッチした勤務制度をつくりました。


<A社の勤務間インターバル制度>

休息時間数
(インターバル)
基準インターバルを確保できない場合の対処法
11時間安全衛生管理規定11時間未満が月に11回を越えた場合は産業医との面談を行う
8時間就業規則8時間未満の場合、8時間経過するまで原則就業禁止、
次の日の就業時間を後倒しする

A社以外にも勤務間インターバル制度を導入した企業は各社、実情に合わせた独自の勤務形態で成果をあげています。



勤務間インターバル制度のメリット


勤務間インターバル制度にはどんなメリットがあるのでしょう。社員側のメリットと企業側のメリットからまとめました。



<社員側のメリット>

〇社員の休息時間が確保できます

長時間労働を防止することで健康被害を阻止、ストレスを解消、心身の健康を保持することが可能になります

〇ワークライフバランスに寄与します

仕事と生活で納得のいく両立を実現、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献します


<企業側のメリット>

〇離職を防ぐ

長労働環境が整備されることで社員の満足度がアップ、定着率が高まります

〇労災対策にも有効

過労などによる人的被害も未然に防ぐので労災対策に効果的です

〇企業のイメージアップ

勤務間インターバル制度の導入をアピールすることはイメージアップとなって求人対策などに効力を発揮します



勤務間インターバル制度の助成金とは


厚生労働省は、国内での勤務間インターバル制度の早期普及のために勤務間インターバル制度導入する主に中小企業をサポートしています。その一つが助成金の支給です。どのようにすれば助成の対象となるのか説明します。



助成金支給対象となるための成果目標の設定

企業は社員に休息時間数
  1.9時間以上11時間未満
  2.11時間以上
1か2の勤務間インターバル制度を導入することです。


勤務間インターバル制度の導入方法

勤務間インターバル制度の導入方法は下記の3種類があります。
  1.新規導入:企業が新たに勤務間インターバル制度を導入する>
  2.適用の範囲拡大:すでに9時間以上の勤務間インターバル制度を導入済み、対象となる社員が全社で半数以下の場合、
    対象となる社員の範囲を広げて半数以上にする
  3.休息時間数の延長:9時間未満の勤務間インターバル制度を導入済みの企業が、休息時間数を新たに9時間以上に延長する
    こと


助成金支給対象となるための具体的な取組の実施

支給対象となるには下記のうち1つ以上の取組を実施する必要があります。
  1. 労務管理担当者への研修実施
  2. 社員への研修などを実施、勤務間インターバル制度の周知
  3. 社会保険労務士や中小企業診断士などのコンサルティングを受ける
  4. 就業規則・労使協定などで時間外・休日労働に関する規定を整備する
  5. 勤怠管理ソフトなど労務管理を行うためのソフトウェアの導入もしくは更新
  6. タイムカードなど労務管理用機器の導入もしくは更新
  7. 人材確保への取組
  8. デジタルタコグラフの導入もしくは更新
  9. テレワーク用通信機器の導入もしくは更新
  10.5、6、8、9以外で勤務間インターバル制度導入に必要な機器の導入もしくは更新

  ※パソコン、タブレット、スマートフォンは対象機器にはなりません。注意してください。


支給額

助成の対象となる費用の4分の3を助成します。ただし上限額があります。下表を参照ください。
<助成金の上限額>

休息時間数新規導入適用範囲の拡大・時間延長
9時間以上11時間未満40万円20万円
11時間以上50万円25万円



勤務間インターバル制度の実施には対応機能を保持した勤怠管理システム導入を


勤務間インターバル制度を導入する上で要となるのは社員の出退勤時刻など手間をかけずに正確に、しかも迅速につかむことです。勤務労働時間の管理は今までの手書きやタイムカード以上により煩雑で大変になります。勤務間インターバル管理機能搭載の勤怠管理システムを活用すれば、容易に労働時間の管理ができます。前述の通り、厚生労働省の勤務間インターバル制度の助成金は、勤怠管理ソフトなど労務管理を行うソフトウェアの導入も助成の対象となります。勤務間インターバル制度を導入する際には、勤怠管理システムに切り替える絶好の時期です。



まとめ


長時間労働による過労死や健康被害から働く人を守る勤務間インターバル制度。政府は導入企業の比率を2020年までに10%以上を目指しており、今後企業での普及が加速度的に進むでしょう。その為には勤怠管理システムツールを活用した制度の運用・管理が有効です。