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裁量労働制とはどのような制度か?

働き方改革の一つとして脚光を浴びている裁量労働制。今後導入する企業も増えていくことが見込まれています。裁量労働制とはどのような働き方なのか。そのメリット、デメリット、対象となる業種や導入方法などを紹介します。さらにフレックスタイム制との違いなども解説します。


裁量労働制とは


裁量労働制とは、実際の労働時間とは関係なく前もって定められた時間を労働時間とみなす制度です。
仕事を時間ではなく成果でみる働き方。つまり労働者の裁量に任せる雇用制度です。そのためにはまず労働者と企業でみなし時間を設定します。
このみなし時間が裁量労働制の肝です。たとえばみなし時間を8時間と設定した場合、仕事が順調に進んで5時間で完了したときも、逆に手間取って10時間働いて完了したときも労働時間はみなし時間の8時間で給料が計算されます。



裁量労働制のメリットとデメリット


メリット

企業の業績向上に貢献
自分に合ったペースで働けるので労働者のモチベーションのアップが図れます。生産性なども向上、ひいては企業の業績向上になります。

優秀な人材の獲得に有効
自分の能力に応じた柔軟な働き方を可能にする裁量労働制。導入している企業には優秀な人材が集まりやすく、また離職率の抑制も期待できます。

デメリット

制度導入に労力がかかる
裁量労働制の手続きは労働基準法に則って行わなければなりません。労使協定の締結や就業規則の規定の変更などかなりの時間と労力を取られます。

チームを組んでの仕事がしにくい
働く時間も取り組む業務も個人の裁量に任せているので集団で行う仕事が調整しにくい面もあります。


裁量労働制が対象になる業種

裁量労働制はどの業種にも当てはまるのではありません。労働基準法に規定されている勤労者の裁量に任せることが多い業種に適用が許されます。専門業務型裁量労働制と企業業務型裁量労働制の2種類に大別されます。



専門業務型裁量労働制とは

専門業務型裁量労働制の対象となる職種は、厚生労働省令などで規定した研究・開発職など専門性の高い分野やデザイナーなどのクリエイティブな仕事、弁護士や公認会計士などのいわゆる士業。労働時間で給与が算出しにくい19業務に限定されています。

<専門業務型裁量労働制の対象業務>
1.新商品・新技術の研究開発
2.情報処理システムの分析・設計
3.新聞・出版や放送番組の制作取材・編集
4.ファッションデザイナー、インダストリアルデザイナー、グラフィックデザイナー
5.放送番組、映画などのプロデューサー、ディレクター
6.コピーライター
7.システムコンサルタント
8.インテリアコーディネーター
9.ゲームソフト作成者
10.証券アナリス、金融商品開発者
12.大学研究者、大学教授
13.公認会計士
14.弁護士
15.建築士
16.不動産鑑定士
17.弁理士
18.税理士
19.中小企業診断士

上記の業務以外では専門業務型裁量労働制は適用できませんので注意が必要です。

企業業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制が対象となるのは、労働基準法で規定した企業の核となる企画立案や調査、分析などの業務、ホワイトカラーと言われる職種です。

<企業業務型裁量労働制の対象業務>
 1.経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境などについて調査及び分析を行い、経営に関する計画を
  策定する業務
 2.経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方などについて調査及び分析を行い、
  新たな社内組織を編成する業務
 3.人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、
  新たな人事制度を策定する業務
 4.人事・労務を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析
  を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務
 5.財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
 6.広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務
 7.営業に関する企画を担当する部署における業務のうち,営業成績や営業活動上の問題点などについて調査及び分析を行い、
  企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
 8.生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を
  行い、原材料などの調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務


裁量労働制の導入方法

裁量労働制はこのような手続きで導入します。専門業務型裁量労働制と企業業務型裁量労働制では手順が異なります。



専門業務型裁量労働制の場合

専門業務型裁量労働制を導入するには下記の項目を定めた労使協定を締結し、労働基準監督署へ届けます。

<労使協定締結で定める項目>
・対象業務
・業務遂行の手段や時間配分など労働者に具体的な指示をしない
・労働時間の算定については、協定で定めるところによるとする旨の定め
・1日のみなし労働時間
・協定の有効期間
・対象業務に従事する労働者の健康・福祉を確保するための措置
・対象業務に従事する労働者からの苦情処理に関する措置


企業業務型裁量労働制の場合

企画業務型裁量労働制を導入するためには事業場内に労使委員会を設置、労使双方の代表委員を選びます。
運営ルールを制定、5分の4以上の多数決で下記の項目を決議。決議内容を労働基準監督署に届け出る必要があります。さらに労働者から個別的な同意を得る必要があります。

<労使委員会で決議する項目>
・対象業務
・対象労働者
・一日のみなし労働時間
・対象業務に従事する労働者の健康・福祉を確保するための措置
・対象業務に従事する労働者からの苦情処理に関する措置
・対象労働者の同意を得なければならないこと、同意しない労働者に対し不当な取り扱いをしない
・決議の有効期間、記録の保存期間


裁量労働制でも時間外割増賃金や休日割増賃金が発生する



残業手当がつく場合

たとえばみなし労働時間が1日9時間の労働者が午前9時から午後7時まで働いたとすると
実働時間10時間、みなし労働時間が9時間なので1時間分の時間外労働が認められ、残業手当をつけなければなりません。


休日手当がつく場合

裁量労働制でのみなし労働時間はあくまで労働日に適用されます。
休日労働に関して企業側は休日労働時間に基づいて法定休日の労働時間には休日割増賃金を、法定外休日の労働時間には時間外割増賃金を支払う義務があります。


深夜手当がつく場合

午後10時から午前5時まで働いた場合、企業は時間外割増賃金と深夜割増手当を支払います。



裁量労働制とフレックスタイム制との違い

最近企業で普及している働き方の一つにフレックスタイム制があります。裁量労働制とはどのように違うのでしょう。
裁量労働制は仕事の進め方や労働時間などを労働者に任せられるのでより効率的に働くことができ、正当に成果を評価されます。
一方、フレックスタイム制は出退勤時間を労働者に委ねる制度です。出退勤時間はフレキシブルタイムで自分の都合で選べますが、 コアタイム中は会社にいなければなりません。フレックスタイム制ではあくまでも労働時間に対して給与が支払われますが、裁量労働制では成果に対して給与が支払われます。


まとめ

実働時間ではなくみなし時間で労働時間を算出する裁量労働制。企業が悪用すれば長時間労働をしても残業代は支払われません。不当なサービス残業で実際に某企業は是正勧告を受けました。
また対象業務が限定されているので企業によっては適用されないケースもあります。裁量労働制は、企業側が単なる残業代カットではなく労働者の業務の効率化、ワークライフバランスのために正しく運用することが重要なことは言うまでもありません。