PCログと勤怠データの乖離はなぜ起きる?
近年、働き方改革やテレワークの普及により、従業員の労働時間管理はますます複雑になっています。特に、PCログと勤怠データの乖離は、多くの企業が直面する共通の課題です。
単なる管理上の問題だと軽視されがちですが、この乖離を放置することは、法的なリスク、従業員との信頼関係の悪化、そして企業の競争力低下に直結する深刻な事態を招きかねません。
本記事では、PCログと勤怠データに乖離が生じる具体的な理由から、その乖離を放置した場合の潜在的なリスク、そして企業が取るべき具体的な解決策まで、包括的に解説します。
PCログ(PCの操作履歴)と勤怠データ(打刻情報)が一致しないのには、従業員の行動からシステム側の問題まで、さまざまな理由があります。ここでは、特に発生しやすい乖離の7つの要因を解説します。
●打刻のタイミングのずれ
●打刻忘れ・修正忘れ
●意図的な改ざん
●不正申告
●PCの非操作時間
●PCのシャットダウン・スリープ・再起動
●ツールの運用ミス・設定ミス
それぞれ詳しく見ていきましょう。
乖離の最も一般的な原因は、打刻のタイミングのずれです。 例えば、出勤打刻を早く済ませたものの、PCを起動して作業を始めるまでに時間が空いたり、退勤打刻後にPCはシャットダウンしているものの、片付けや同僚との会話などで会社に残っていたりすることが挙げられます。 また、PCログツールの中には、午前0時を境に翌日のログとして記録してしまうものがあり、労働基準法で継続した一勤務と見なされる場合との間で大きな乖離が生じることもあるのです。
従業員によるヒューマンエラーも大きな要因です。具体的には、業務の忙しさなどで打刻を忘れることや、打刻を忘れて後から記憶に頼って修正申請をしたが、間違っているというケースです。
乖離の中には、意図的な改ざんとして時間をずらして申告されるケースも含まれます。 例えば、残業代を得るために、業務が終わっているのに退勤打刻を遅らせる「カラ残業」や、逆にサービス残業を隠すために、打刻時間と実際の労働時間をずらして申告するなどです。 また、業務量が多すぎる、あるいは残業規制が厳しいなどの理由で、自己申告を虚偽にする場合もあります。
物理的に勤務を開始していない時間帯に打刻が行われることも不正申告の一種として乖離を生みます。通勤途中にスマートフォンで打刻するケースなど、物理的に勤務が開始していない時間帯に打刻している場合や、同僚に打刻を依頼する行為も該当します。
PCログが「PCの操作時間」を記録する性質上、実際の労働時間には「PCを操作しない時間」も含まれ、このPCの非操作時間が乖離の原因となります。 具体的には、PCを起動したまま離席し、休憩や会議、電話対応などを行っている場合、社外での打ち合わせや顧客訪問などでPCを使用しない時間が発生する場合などです。 PCを起動したまま食事や休憩をとっている時間なども該当します。
PCの操作状況に関するシステム的な動作も乖離を生みます。PCをスリープ状態にしたまま放置したり、シャットダウンし忘れたりすると、PCログ上では作業が継続されているように記録されることがあるからです。一方で、再起動に時間を要する場合、その間はPCログが記録されないため、実際の労働時間と乖離が生じます。
システム側の問題や運用ルール不足も乖離の原因です。 勤怠管理システムやPCログ管理システムの設定に不備があり、正確なデータが取得できていない場合や、システム障害やネットワークの問題でデータが正しく連携されないケースが考えられます。また、PCログ収集ツールや勤怠管理ツールの設定不備により、正確なログが取得できていないこともあります。
PCログと勤怠データの乖離は、単なる管理上の手間ではなく、企業経営に深刻な影響を及ぼすリスクに直結します。乖離を放置した時のリスクについて以下の4つにまとめました。
●法違反リスクと罰則
●未払い金の発生リスク
●組織内の不信リスク
●ガバナンスと監査のリスク
それぞれ詳しく見ていきましょう
労働時間の適正な把握は、企業の義務であり、乖離を放置することは法違反リスクを高めます。労働基準法では、使用者が従業員の労働時間を適正に把握する義務があると定められています。乖離がある状態を放置し、実際の労働時間を正確に把握できていない場合、この義務を怠っているとみなされる可能性があるのです。
従業員の残業時間が過少に申告されていたり、サービス残業が常態化していたりする場合、労働基準監督署から是正勧告や指導を受けることもあります。最悪の場合、企業名が公表されたり、罰金などの罰則が科されたりするケースがあるので注意が必要です。
乖離を放置していると、残業代の計算に誤りが生じて、未払い金の発生リスクが高まります。もし、従業員が未払い残業代の支払いを求めて訴訟を起こした場合、企業は過去に遡って未払い分を支払う義務が生じます。そうなると、多額の追徴金や遅延損害金の支払いが発生するだけでなく、企業の財務状況に大きな打撃を与えるでしょう。
注意すべきは、PCログ上では長時間働いているのに、勤怠データでは定時で退勤していることになっている場合です。この場合、残業代が適切に支払われていないことになります。
不適切な勤怠管理は、従業員との信頼関係を根底から損ない、組織内の不信を生みます。PCログと勤怠データの乖離が常態化していると、従業員は「会社が自分の働きを正当に評価してくれない」「サービス残業を強要されている」といった不信感を抱くようになります。この不信感は、従業員のモチベーション低下やエンゲージメントの低下につながり、最終的には離職率の増加や採用活動への悪影響を招くかもしれません。
上場企業の場合、労働時間の管理は内部統制の一環として重要です。そのため、乖離の放置は、ガバナンスと監査のリスクにつながります。内部統制の不備とみなされると、外部監査で指摘を受けたり、投資家からの評価が低下するなどマイナスの影響が懸念されます。企業の労働環境やコンプライアンス体制が不透明なままだと、企業価値そのものが損なわれる危険性もあるので注意が必要です。
PCログと勤怠データの乖離を放置することは重大なリスクを伴うため、企業は積極的な是正措置を講じる必要が出てきます。ここでは、乖離を是正するための対策について3つ紹介しましょう
● ルールの明確化と周知
● 乖離の自動検知
● 適切なツールの導入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは、労働時間管理のルールを明確にし、従業員に徹底的に周知することが重要です。乖離が発生した際には、調査やヒアリングを徹底し、なぜ乖離が生じたのか、その原因を特定しましょう。従業員に対しては、PCログを取得する目的が健康管理や適正な労働時間管理にあることを丁寧に伝え、納得してもらうことです。打刻ルールの再確認を行い、PCログ取得の目的を共有することで、従業員の理解と協力を得ていきましょう。
次に、システムを活用して乖離を未然に防ぎ、迅速に是正できる仕組みを構築します。例えば、PCログと勤怠データに一定時間以上の乖離が生じた場合、管理者や本人に自動でアラート通知される機能を活用するなどです。この対策は、意図的な不正や単なる打刻忘れを早期に発見することにもつながります。また、乖離状況をまとめたレポートを定期的に作成し、労働時間が適正に管理されているかを把握しましょう。
最も実効性の高い対策の一つが、客観的なデータを突き合わせられるツールの導入です。PCログは勤怠管理において極めて重要な客観的記録とされており、裁判においても法的効力があるとされています。例えば、残業を月30時間以内とする指導の事実を考慮しつつも、PCログの記録を根拠に実際の労働時間が認定された判例もあります。客観的労働時間データを証拠として活用するためにも、勤怠データと容易に比較できるPCログツールの導入をおすすめします。
参考サイト:弁護士法人共創(労働経済判例速報2020.5.20 )
PCログと勤怠データの乖離は、単なる打刻忘れやシステムの不備だけでなく、意図的な改ざんや企業の不十分な管理体制など、さまざまな要因によって引き起こされます。この乖離を放置することは、労働基準法違反による罰則だけでなく、ガバナンスの欠如といった深刻なリスクを招くでしょう。
これらのリスクを回避し、健全な労働環境を構築するためには、まず労働時間に関するルールの明確化と従業員への周知徹底が不可欠です。また、乖離を自動で検知できるシステムの導入や、PCログを客観的な証拠として活用できるツールの導入も有効な解決策となります。
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