コラム:企業が抱える重大リスク「隠れ残業(ステルス残業)」を防ぐ3つの必須対策 企業が抱える重大リスク「隠れ残業(ステルス残業)」を防ぐ
3つの必須対策とは?

企業が抱える重大リスク「隠れ残業(ステルス残業)」を防ぐ3つの必須対策とは?

「隠れ残業」や「ステルス残業」という言葉をご存知でしょうか?これは、定時内に業務が終わらず、申請せずにサービス残業や持ち帰り仕事をすることを指します。

日本企業に根深く残るこの問題は、一見すると仕事熱心に見えますが、実は企業にとって深刻なリスクをはらんでいるのです。従業員の健康を害し、生産性を低下させるだけでなく、法的な罰則や企業イメージの失墜にもつながりかねないからです。

本記事では、この隠れ残業がなぜ発生するのか、そのリスクとは何かを掘り下げ、企業が今すぐ取り組むべき3つの必須対策を詳しく解説します。



隠れ残業(ステルス残業)が発生する理由

隠れ残業(ステルス残業)が発生する理由

隠れ残業またはステルス残業とは、表面上は定時で帰っているように見えたり、残業を申請していなかったりするものの、実際には業務時間外に仕事をしている状態を指します。「ステルス(stealth)」は英語で「隠密」「こっそり行う」「気づかれないようにする」といった意味合いを持ち、まさに隠れ残業(ステルス残業)を的確に表しています。

隠れ残業が発生する原因や理由は、以下のとおりです。

●人手不足と業務量の増加
●成果主義の弊害
●同調圧力や価値観
●キャリアや評価への不安
●労働時間管理の不備

それぞれ順に解説していきます。

人手不足と業務量の増加

多くの企業で人手不足が常態化し、従業員一人あたりの業務量が過剰になっています。就業時間内に仕事が終わらない状況が発生しやすく、人手不足の企業ではサービス残業や持ち帰り仕事が発生しやすいのが常態化しています。

成果主義の弊害

成果主義の評価制度が導入されている場合、与えられた目標を達成するために、時間外労働が「当たり前」とされるケースがあります。働いた時間ではなく成果で評価されるため、残業の申請がしづらくなり、未申請の残業が黙認されやすくなるのです。

同調圧力や価値観

「長時間働くのが美徳」といった根強い労働文化が隠れ残業を助長します。同僚が残業しているのに自分だけ定時に帰ることに罪悪感を覚えるような同調圧力や価値観が植え付けられているケースも少なくありません。法定上限まで残業時間を使い切った後も「申請せずに残業する」のが当たり前といった職場も一定数見られます。

キャリアや評価への不安

「この仕事が終わらないと評価が下がるのではないか」「周りに差をつけたい」といった不安から、自主的に残業を選ぶ従業員もいます。また、自分のスキルアップや将来のための自己研鑽を業務時間外に行うケースも見られます。本来なら業務内で取り組むことが認められているのに、意図せず隠れ残業となってしまっている場合もあるようです。

労働時間管理の不備

業務の進捗状況を適切に管理せず、部下に無理な納期や過大なタスクを課す上司がいる場合、部下は隠れ残業で対応せざるを得なくなります。さらに、労働時間を正確に把握・管理する仕組みが不十分だと、従業員が残業を申請しづらいといったこともあります。PCのログや入退室記録などの客観的なデータがないと、そもそも実態を把握することすら困難です。

隠れ残業がリスクになる理由

隠れ残業がリスクになる理由

隠れ残業は、単なる「サービス残業」では済まされない、企業存続に関わる重大なリスクをはらんでいます。その理由を3つ解説します。

●生産性の悪化
●人材流出
●罰則や訴訟

それぞれ詳しく見ていきましょう。

生産性の悪化

隠れ残業は、一見すると仕事が進んでいるように見えるかもしれませんが、長期的には組織全体の生産性を低下させます。その影響として、疲労による集中力低下、創造性の喪失、非効率な業務の温存といったものがあります。長時間労働は、従業員の心身に大きな負担をかけ、集中力や判断力を低下させるものです。業務効率が下がるだけでなく、ミスや品質の低下を招きやすくなります。
また、疲弊した状態では、新しいアイデアを生み出す余裕がなくなり、革新的な取り組みや業務改善が進みません。隠れ残業が当たり前になると、「なぜこの仕事に時間がかかるのか?」という根本的な問いが忘れられ、非効率な業務プロセスが改善されないまま温存されてしまうのです。

人材流出

隠れ残業は、従業員のモチベーションを下げ、優秀な人材の離職につながります。努力が正当に評価されず、無償で長時間労働を強いられる状況は、従業員の仕事への意欲を著しく削いでしまうからです。また、仕事と私生活のバランス(ワークライフバランス)を保つことが困難になります。
隠れ残業が常態化した企業は、離職率が高まるだけでなく、その情報が口コミなどで広まることで企業のブランドイメージを悪化させてしまいます。その結果、優秀な人材が集まりにくくなるという悪循環に陥るでしょう。

罰則や訴訟

隠れ残業は、労働基準法違反となる可能性があり、企業は大きな法的リスクを負います。特に問題となるのが、従業員が業務時間外に働いたにもかかわらず、その分の賃金が支払われていない未払い賃金です。
具体的には、労働基準監督署による指導・勧告や、割増率によって増額された未払い賃金の支払い義務が生じます。さらに、労働基準法119条に基づき「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課される可能性もあるのです。これは罰金や懲役という重い罰則に該当し、企業の社会的な信用を失わせ、経営に深刻な打撃を与えることとなります。

<未払い賃金の是正勧告の事例>

監督指導状況

参考サイト:厚生労働省|賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)

また、大規模な事例として、2024年12月には大分県立病院の医師に対し、労働基準監督署の是正勧告に基づき、残業代の未払い分として対象者300人、金額は4億3,000万円 を支払うことになったケースが報道されています。

参考サイト:読売新聞 |大分県立病院が医師へ時間外手当の一部未払い計4億円超か…

隠れ残業を防止する3つの対策方法

隠れ残業を防止する3つの対策方法

隠れ残業は、従業員個人の問題ではなく、企業側の仕組みと文化に起因します。このリスクを根本から断つために、企業がいますぐ取り組むべき具体的な3つの対策を紹介します。

●業務効率化と適正な業務量の設定
●組織文化の改革
●PCログによる労働時間管理の徹底

それぞれ詳しく見ていきましょう。

業務効率化と適正な業務量の設定

非効率な業務プロセスや過剰な業務量は、隠れ残業の直接的な原因となります。「時間内に終わらないから、隠れてやるしかない」という状況をつくらないことが重要です。この対処法として、業務プロセスの見直しと業務量の可視化&平準化の2つに取り組んでみましょう。
具体的な方法としては、定期的に部署やチームで業務フローを洗い出し、無駄な作業や重複を排除します。特にルーティン業務については、RPAなどのデジタルツールを導入し、定型業務を自動化することが有効で、これによりコア業務に集中できる時間を増やします。また、一部の従業員に業務が集中しないよう、プロジェクト管理ツールなどを活用して、個々のタスク量や進捗状況をチーム全体で共有しましょう。タスクが偏っている場合は、タスクの再分配や人員の増強を検討します。

組織文化の改革

「長時間労働が美徳」という旧態依然とした考え方を改め、生産性を重視する文化を醸成することが不可欠です。具体的には以下のようなものがあります。

●ノー残業デーの導入
●定時退社を評価する人事評価
●上司の意識改革

特定の曜日をノー残業デーとして設定し、全社的に定時退社を奨励します。形骸化させないためには、上司が率先して退社し、定時後の会議や業務を禁止するなどの徹底が必要です。
また、「残業が多い=頑張っている」ではなく、「時間内で高い成果を出す=優秀」と評価する人事制度に改めます。定時退社を継続している従業員や、効率的な働き方を実現しているチームを積極的に評価することで、働き方に対する意識が変わるでしょう。
部下に隠れ残業を強いる上司は、企業にとって最大のリスクです。管理職向けに、労働基準法やハラスメントに関する研修を定期的に実施し、部下の健康管理も重要なマネジメント業務であるという意識を徹底的に植え付けましょう。

PCログによる労働時間管理の徹底

隠れ残業の温床となるのは、労働時間の不透明さです。解消するためには、客観的な記録に基づいた勤怠管理を徹底する必要があります。具体的には、以下の2点を意識しましょう。

●PCログや入退室記録の活用
●持ち帰り残業の禁止

タイムカードや自己申告だけでなく、PCの起動・シャットダウン時間、オフィスへの入退室記録などを活用し、従業員が実際に従事した時間を正確に把握します。これにより、自己申告との乖離をチェックし、サービス残業の兆候を逃しません。
そして、業務時間外の持ち帰り作業を原則禁止とします。やむを得ず行う場合は事前に申請・承認を得る仕組みを導入し、業務指示と労働時間を明確に管理しましょう。

まとめ

まとめ

「隠れ残業」は、従業員の心身の健康を損なうだけでなく、未払い賃金による法的リスクや生産性の低下、そして優秀な人材の流出といった、企業の存続に関わる重大なリスクをもたらします。このリスクを防ぐためには、労働時間の正確な把握、業務効率化、そして働き方に対する意識改革が不可欠です。

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