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【匠】現場マネージャーとフェロー萩本氏 討論会 (後編)

要求開発を実践してみて ~幹部マネージャー達が語るNDS要求開発の今後~

日時 2010/3/2 (火) 15:00~16:30
場所 NDS本社ビル
参加者 萩本順三氏(NDSフェロー(株)匠BusinessPlace(以下、匠BP)代表取締役 要求開発アライアンス 理事)
中島統括マネージャー、荒井シニアマネージャー、藤本SB事業推進統括
山本マネージャー、荒木マネージャー

NDSが要求開発に取り組みはじめて1年が経とうとしています。マネージャー陣それぞれが、まだ手探り感もある中で、かなりの手応えを感じているようです。そんな中行われた、萩本フェローを交えての討論会の様子をご覧ください。

要求開発をどのように実践したか

萩本フェロー

萩本F フェローという立場でNDSの活動を見てきた私が、進行役を務めさせていただきます。要求開発をどんなところで実践してきたのか。それぞれのマネージャーの方々に、振り返りをお願いしたいと思います。まずは要求開発の推進マネージャーという立場で、荒井さんいかがですか?
荒井 今年度の4月から初めて、あっというまに1年がたったという印象です。NDSは要求開発を3つのことに使おうと考えました。
1つは、要求開発を武器にしたビジネスの拡大。
1つは、既存ビジネスの要求開発による価値向上。
そして、要求開発活動による社内の活性化です。
ただ、簡単に手がけられるものではないので3年計画を立て、今年度がその1年目に当ります。
萩本F どのような方針で取り組みましたか?
荒井 ビジネス、教育、ブランディングの三本柱を施策として掲げました。今年度は要求開発への取り組みを認知してもらうためのブランディング活動と、内なる仕事力の向上のための教育に力をいれました。また、ビジネスの手探りもいくつか行いました。
萩本F 要求開発や匠メソッドを社員の皆さんはどのように受け入れていますか?
荒井 要求開発を推進していくため、社員の中で中心的な動きをできるメンバーを選抜して、メジャーリーガー(笑)という部隊を作りました。彼らが率先して実践していくことで周囲へ浸透していくことを狙っています。ただ、要求開発で目指している、「真に価値のあるものだけを作る」というところまでは、まだ至ってないと思います。

荒井シニアマネージャー

萩本F 要求開発の一つの側面として、はっきりと分かるまで作らないというよりも、はっきりと分かるために作るという考えがあります。
荒井 そういう意味では、メジャーリーガーの中では、とにかくやってみて結果イメージを早く獲得しようというノリが生まれてきていると感じています。ただ、社員全体に浸透しているかというと、推進者としては忸怩たるものがあります。やはり、要求開発は超上流工程で使うものだという印象を持たれている部分があります。
萩本F 実は要求開発はどこでも使える考え方で、プランニングの際に価値を高めやすくしたり、プランの早期検証によりリスクヘッジできることが良さなんですよね。私は、アジャイルと要求開発は非常に近いところにあると感じています。アジャイルをビジネス的に行うために要求開発が必要で、要求開発段階でアジャイルに価値を描く活動が要求開発。
藤本 メジャーリーガーに力が付いてきていて実践できるようになってきたと、私も感じています。それと先月からメジャーリーガーを講師とした「匠道場」という社内教育が始まっています。要求開発は超上流だけで使うものではないんだよとか、あらゆる局面で使えるんだよということも教えています。そこでやっと、実践できないまでも、イメージは正確につかめたのではないかと感じています。

中島統括マネージャー

萩本F 部門の統括マネージャーという立場で、中島さんいかがですか?
中島 ブランディングにせよ教育にせよ、最終的にビジネスに繋がらないと、私の立場としては面白くない(笑)。 なのでメジャーリーガーとは別に、実際に案件を獲得することを目的とした「iプロジェクト」を結成し、ここにいる荒木を中心に活動しています。
荒木 僕らは主にメインフレームのマーケットを担当していまして、要求開発を武器にしてマーケット自体を活性化しようという大きな目論見も持っています。従来は、営業がとってきた仕事をSEが行うというビジネスをやってきたのですが、SEも営業に同行し、お客様から課題を聞いて提案する、という活動を行っています。そのための準備としてソリューションマップの作成や、要求開発や営業スキルの向上なども行っています。言われたとおりに作るのではなくお客様から直接課題を聞いて提案するということに面白さを感じているようで、メンバーが生き生きとしてきたのを感じています。
萩本F ビジネスとしての成果はいかがですか?

荒木マネージャー

荒木 まだ要求開発ズバリという案件は取れていないのですが、お客様の課題を聞き出そうという行為の中で、派生案件が取れてきています。そのおかげで皆が忙しくなってきて嬉しい悲鳴です。
萩本F 要求開発にチャレンジしている会社は、ユーザー企業さんからは素敵に映ります。何も持っていない会社には、お客さんは振り向いてくれません。それが、要求開発案件はとれなくても、派生案件はとれるという結果に繋がっていると思います。
藤本 NDSだけでなくひびきホールディングスの中では、お客様と密接な関係を作って予算取りの段階から参画させていただき丸ごとサポートする、というアプローチがあります。そのお客様をG層顧客と呼んでいるのですが、どうやってG層顧客を掴むかというと、一人一人の営業マンのスキルに依存しているのが現状でした。そんな中で、要求開発という商品をお客様にアピールすることが、そのままG層顧客に繋がるということがとても分かりやすくて実践しやすいです。営業スキルだけでなく要求開発という武器を持っている。そこに我々が培ってきたエンジニアとしてのスキルをそのままぶつけることができる、そこが大きな価値だと思います。

藤本SB事業推進統括

萩本F 仰るとおりだと思います。提案型営業になろう、提案できるSEを育てよう、上流工程を強くしよう、ビジネスプロセスを確立しよう、色々なことがユーザー企業さんやベンダーさんで言われていますが、それをやるための方法は何なの?というと無いんです。その武器を、我々匠BPは、NDSとともにしっかりと作れてきたという自信を持っています。
続きまして、製品開発の中での要求開発について、藤本さんいかがでしょうか?
藤本 e-就業ASPという弊社の就業管理パッケージがあるのですが、これまでがむしゃらに開発してきて軌道に乗ってきたという実感もあるなかで、一度振り返って、要求開発により本来あるべき姿を描きなおしてみよう、という活動をスタートしました。例えば「届出」とか「休暇」という一般的な概念についても、人それぞれ違う解釈をしている。それを見える化することによって開発部隊、営業部隊で意思統一をはかってお客様に説明できる。そのベースとなるモデルのゴールが見えてきて嬉しいですね。
萩本F 見える化に関して私が要求しているのは、何のために作る、どう活かすかを常に問うことです。何のために作るか問わなかったら、アウトプットを作ったら終わりなんですよね。それはソフトウェア開発も同じで、成果物に対してシビアにその目的や価値を問うようなやり方は今結構欠落していると思うのですが、これをやっていくとすごく洗練されます。それでは、一歩離れた立場から要求開発の活動を見ていた山本さん如何でしょう。
山本 現状、まだメジャーリーガーの仕事と現場の仕事が繋がっていないという印象を受けますね。
萩本F 課題が出てきましたので、課題の話に移りましょうか。

適応したことで見えた課題とは

山本マネージャー

山本 確かに、ブランディングや営業も大事だと思うんです。要求開発を既存ビジネスの現場に適用していくことによって、気がつくとお客様に「NDSは変わったね」とか「質が良くなったね」という評価を得て、「じゃあNDSも上流工程からやってみないか」などと広がっていくのが理想だと考えています。
萩本F 他のマネージャーさんは認識されていることだと思いますが、ビジネス価値とか営業力とか外側の価値を最優先させてきたため、私のフェロー活動も、中身のエンジニアリングとかに対しては少ないかなあと思います。分類すると、価値を描く部分と作る部分があって、実際は作る部分の方が多いので、そこに普及できていないことは、課題と言えますね。
荒井 実はメジャーリーガーは、自分たちが得たものを現場で実践はしているんですよね。ただ、それが広まっていかない理由として、その価値を周囲の社員に説明できていないのではないかと思います。自分の部下に説明できないと、当然お客様にも説明できませんので、そこが今後の課題だと思います。
萩本F 私がNDSでフェロー活動を行っているときに持っている将来のイメージは、エンジニアがブランディングして、営業して、コンサルして、開発やって、ということなんですね。そこを一人で回せる能力が、今エンジニアにとって必要とされてきていると感じています。今NDSの中で、作ることをしっかりやれている人は多いと思うんです。足りないのは価値の部分を描いて、形にして、お客様を説得して、そこのプロセスを作って、それをプロジェクト化していくという、まさに要求開発の領域ですね。これを身につけることを先行させています。この方がビジネス的に活性化できると思います。そういう意味で、全てを同時並行的に進めることは難しいですので、遅れている部分があるのは事実だと思います。
藤本 スキル・適正があるので、社員の間でばらつきがあるのはしょうがないと思います。課題として、NDSがビジネスをどういう風に組み立てていくんだということも含めて、もっと見える化していかなければならないと思います。社員の役割であるとか、期待するものであるとか。例えば誰々をコンサルに据えて、そこから連鎖して皆がそういう要素を備えてビジネスをやっていくんだとか、そういう具体的な我々のビジネスの見える化する努力をしていかなければならないと思います。

目的と手段の連鎖の「Z軸」

萩本F 私が、開発をやっている人とかテストをやっている人とかもZ軸(右図参照)を知るべきだというのは、自分の仕事を匠にするためのテクニックだからなんですよね。もっと上流から見た自分の価値を検証するとか、上流の中で何が起こっているかを知ることが要求開発の基礎なんで、そういうことをやることで、おのずからコンサルティング能力が身に付いてくるんですよね。
山本 既存ビジネスの現場で要求開発を適用しようとすると、どうしても壁があるんですよね。これまでのビジネス形態、伝統、開発方法など。そこを崩したいと思っています。
萩本F それは匠BPの課題でもあるんですよ。業界自体をそっちの方向に引っ張っていく必要性があると思うんです。放っておいても軌道修正はそんなに進まないと思うんです。誰かがIT業界の価値を高める行動をしないと。匠BPはそこにチャレンジしていこうという匠の精神を持って作った会社ですし、匠Netというのを考えていて、ユーザー企業とか志のあるIT企業が集まってユーザー企業を支えつつ、ユーザー企業も覚悟して自分たちのビジネスを作り上げていこうという、チームを作っていきたいと思っています。
荒井 NDSも匠Netの中で存在感を示していきたいですね。

今後の取り組みについて

萩本F では、今後のビジネスについてはいかがですか?
荒井 来年度は2年目という事で、ビジネスを本格的にしていかないといけないですね。コンサルティング、教育、SEによる営業などの新しい分野への取り組みを加速していきます。
萩本F そうですね。そういった新ビジネスを成功させない限り本物と言えないですよね。あとは、チャレンジ精神旺盛な社員をたくさん創出できている会社を目指して欲しいですね。新しいものにチャレンジすることが怖いんではなく楽しい、上司もそれを支援してくれている、そういう社風を作り上げることが大事なんじゃないでしょうか。でないと、新しいビジネスを立ち上げるときに「今の社員では無理」、という話になってしまいますよね。でもNDSは十分に育ってきています。僕はできると思います。
荒井 誰にでもできることではないことをやるから価値があるので、だからこそチャレンジ精神を大切にしていきたいですね。
荒木 ビジョンや戦略など顧客価値ドリブンで動けるセンスはなかなか身に付かない社員もいると思いますが、業務の見える化などは、業務系を担当していたSEは得意なので、適材適所で推進していけば良いと思います。
萩本F 強いところを延ばした方がよいです。弱いところは後から付いてきます。いろんな人がいて良いんです。Z軸全域に対してNDS全体で価値を提供できる体制を組むことが、NDSの勝ちパターンだと思います。Z軸の上側は1~2割でよいんです。
荒井 そのためには人材採用にも当然力を入れていきます。要求開発の推進という意味では、中途採用を重視しています。先ほどの話ではないですが、チャレンジ精神のある社員ですね。

NDS本社ロビーにて

萩本F それでは、最後に一言お願いします。
荒木 iプロジェクトでは、お客様にプロダクトではなく価値を提供するというところで勝負できるという手応えをつかんだので、もっともっと推進していきたいですね。iプロジェクトとかメジャーリーガーという枠の中だけでなく、NDSトータルで勝負していきたいです。
中島 今年度は、いろいろな経験を通じていい手応えを掴みました。行けそうだと思っています。来期はどんどん提案活動をしていきたいですね。そしてお客様に要求開発のソリューションをばんばん提供したいですね。
山本 ビジネスをやっている以上、見返りが必要ですよね。売り上げ、利益の実績はもちろん、ビジョンを出していけば、社員にも元気が出てきますし、チャレンジ精神も出てくる。夢をみんなに見せてあげたいです。
荒井 NDSの強みを生かした、NDS流の要求開発を確立していきたいですね。
萩本F 私はNDSの社員が家族に誇れるものを持って欲しいですね。あとは3Kなどと呼ばれるIT業界を変革する先頭を走る、あこがれの会社。そしてIT業界の中での人気企業ベスト10に入って欲しいですね。(笑)
~討論を終えて~

8月に行われた前編では、萩本フェローのパワーに押され気味のマネージャー陣でしたが、自らの要求開発スタイルを確立してNDSの将来を描き、フェローと熱い意見をぶつけ合ったようです。そして、それぞれが、討論の中からきっかけを掴んで、2年目に向けての「覚悟」を新たにしました。

今後のNDSの要求開発に、どうぞご期待ください!

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