働き方が多様化する今、「自社の勤怠管理、このままで大丈夫だろうか」と不安を抱える企業は少なくありません。テレワークやフレックスタイム制が普及する中で、従来のタイムカードやExcelによる管理では、正確な労働時間の把握や法令遵守が難しくなっています。
本記事では、勤怠管理の目的や法的義務を徹底解説したうえで、勤怠管理ツールを導入する際の注意ポイントまで紹介します。ぜひ参考にしてください。
安全配慮義務や客観的な労働時間把握義務の強化に伴い、勤怠管理は単なる出退勤の記録を超えた重要な役割を担います。まずは、基礎となる勤怠管理の定義と3つの目的を解説します。
勤怠管理には、法令順守(コンプライアンス)・人件費の適正化・従業員の健康管理(安全配慮義務)といった3つの目的があります。それぞれ以下の表にまとめました。
| 目的 | 詳細 |
|---|---|
| 法令遵守 (コンプライアンス) |
●労働基準法、安全衛生法などに基づく義務の履行。 ●労働基準法、安全衛生法などに基づく義務の履行 |
| 人件費の適正化 | ●正確な残業代や深夜手当の計算 ●コスト削減と予算管理への貢献 |
| 従業員の健康管理 (安全配慮義務) |
●過重労働のチェック ●長時間労働者への面談指導など企業の義務 |
勤怠管理の対象となる項目は幅広く設定されています。具体的な項目は以下のとおりです。
●出勤・退勤時刻
●休憩時間
●実労働時間
●所定外労働時間(残業、休日出勤)
●年次有給休暇
●欠勤、遅刻・早退
●代休、振替休日
●育児、介護休業
なお、客観的な労働時間を正確に把握するため、原則として1分単位での記録が求められます。
働き方改革関連法により、労働時間の管理は企業の「義務」へと明確に変わりました。従来の曖昧な運用は通用せず、法令違反は罰則や企業の信用失墜という直接的なリスクにつながります。ここでは、勤怠管理にまつわる法的義務とリスクについて解説します。
2019年4月施行の働き方改革関連法により、労働安全衛生法が改正されました。「客観的な記録による労働時間の把握」が企業の法的義務になったのです。具体的には、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化などが導入されました。これまで行政指導だったものが、労働安全衛生法に基づく法的義務へと強化されています。対象者は管理監督者(役職者)を含む全ての労働者です。建設業や運送業などの特定産業にも時間外労働の上限規制が順次適用されています。罰則リスクを避けるためにも、労務管理のデジタル化は喫緊の課題です。
参考サイト:労働安全衛生法第66条の8の3/労働安全衛生規則第52条の7の3
法定労働時間や法定休日を超えて従業員を労働させる場合に必須となる、企業(使用者)に締結と届出が義務付けられている労使間の書面による協定です。協定が締結・届出されていない状態で法定労働時間を超える残業などをさせた場合、企業は労働基準法違反となります。違反した場合の罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
さらに2019年4月施行の働き方改革関連法により、36協定を締結した場合でも、時間外労働(残業)には罰則付きの厳格な上限が設けられました。その上限は、以下のとおりです。
●1年間の時間外労働の上限は720時間以内(月平均60時間)
●複数月の平均の上限が80時間以内(法定休日労働も含む)
●単月の時間外労働の上限は100時間未満
上記の罰則付き上限とは別に、時間外労働が月45時間、年360時間という原則的な上限も存在します。特別条項付き36協定を締結した場合でも、月45時間を超えられるのは、年間で6回(6ヶ月)までと定められています。残りの6ヶ月は原則通り45時間以内に収めなければなりません。
2023年4月には、中小企業における時間外労働の割増賃金率が、大企業と同様の50%以上へと引き上げられました。改正前は中小企業では月60時間を超える時間外労働に対し、25%以上の割増賃金率が適用されていました。この変更により、今後は一律50%以上の水準が求められます。上限規制に違反した場合、企業は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。
2019年4月施行の改正労働安全衛生法により、企業は労働時間を客観的な方法で把握し、記録することが義務付けられました。これは管理監督者を含むすべての労働者が対象です。記録の原則として、労働日ごとに、始業時刻と終業時刻を正確に記録しなければなりません。客観的な方法とは、タイムカード、PCのログデータ、勤怠管理システムなどによる記録を指します。自己申告に頼る場合は厳格な要件を満たす必要があり、原則として認められないため注意が必要です。労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの重要書類は5年間(現時点では経過措置として3年間)保存する義務があります。
参考サイト:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
参考サイト:労働安全衛生規則第52条の7の3
上限規制に違反し、労働者に違法な長時間労働をさせた場合、企業や管理責任者に対して罰則が適用されます。使用者が違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」の対象となります。また、長時間労働を命じた企業そのものだけでなく、労働時間を管理していた事業主や管理責任者なども罰則の対象です。罰則には、罰金や書類送検、企業名の公表などがあり、影響として「ブラック企業認定」による信用の失墜も大きな影響となります。未払い残業代の支払い(遅延損害金や付加金が加算される)も大きなリスクです。
主要な勤怠管理方法4種とその特徴を紹介します。それぞれのメリットとデメリットを比較して、どの勤怠管理方法が自社に合っているかの参考にしてください。
タイムカードは、導入コストが低く、直感的でわかりやすいというメリットがあります。一方、物理的な不正打刻(代理打刻)が起こりやすい点がデメリットです。加えて、集計作業が非効率で、データ化・保存にも手間がかかります。さらに自己申告制のため、実態調査や労働時間の補正措置が不可欠です。実態と乖離した際の法的リスクも高い管理方法といえます。
Excelやスプレッドシートでの管理は、カスタマイズ性が高く、無料で導入が可能という点がメリットです。デメリットは、関数エラーによる計算ミスのリスクや、法改正時の対応漏れが起こりやすい点です。勤怠状況の把握が遅れるなど、リアルタイム性の欠如も問題といえます。また、Excelへの自己入力は、原則として「客観的記録」として認められにくい点も大きな課題です。フォーム修正や集計、チェック作業が属人化しやすく、管理者の負担が大きい点も無視できません。
クラウド型は、低コストで導入が容易であり、場所を選ばず利用できます。法改正対応が自動で行われる点も大きな利点です。初期費用が抑えられ、IT専門スタッフの維持コストがかからないため、中小企業が選択するケースが多いのも特徴です。ただし、従業員ごとの従量課金が主流でランニングコストが発生するというデメリットもあります。
オンプレミス型は、高いセキュリティと自由なカスタマイズ性がメリットです。基本的には買い切り型が多く、初期費用が高額になる点がデメリットです。また、購入して終わりではなく、ユーザー追加時に追加ライセンスが発生します。さらに、自社でシステム管理が必要なため、運用・保守に専門知識が必要となります。
各種勤怠管理システムの特徴を知ったうえで、自社に合った勤怠管理システムを選定する際に気を付けるべきポイントをまとめました。
現代の多様な働き方に対応できる柔軟性は、システム選びの最重要ポイントです。オフィス出勤、在宅勤務、直行直帰など、場所を問わず正確に記録できる機能が必要となります。始業・終業時刻を従業員自身が設定できるフレックスタイム制では、清算期間を通じた残業時間や有給休暇の正確な把握が難点です。また、在宅勤務の「中抜け」や「私的拘束」の判断が難しいのも課題です。テレワークを導入している企業だと、GPS機能による打刻場所の記録や、PCのログ(起動・シャットダウン時刻)との連携機能が必要となります。
勤怠管理システムに蓄積されるデータは、人件費管理や経営判断のための重要な資産となります。単に労働時間を集計するだけでなく、データをいかに活用できるかが重要です。例えば、残業が多い部署や時間帯を分析し、業務改善と労働時間の是正に活用するなど、従業員のワークライフバランスの改善に役立てられます。
労働基準法や関連法規は、頻繁に改正されます。なかでも、残業時間の上限規制や割増賃金率の変更などは、勤怠管理に直結する改正です。勤怠管理担当者が手動で設定変更するのは、大きな負担であるだけでなく、ミス発生の危険性もあります。クラウド型のシステムであれば、サービス提供元による自動アップデートにより、手間とリスクを避けられます。
個人情報などの機密情報データを扱うため、システムの安全性と、トラブル時の信頼性は極めて重要です。データ通信が暗号化されているか、データの定期的なバックアップ体制が確立されているかを確認しましょう。管理者、従業員、部門長など、役職や権限に応じたアクセス制限を細かく設定できるかもポイントです。
システムを初めて導入する場合、初期設定や従業員への操作説明に関するサポートが充実しているかも重要です。また、導入時だけでなく、運用中の疑問やトラブル発生時に、電話やメールなどで迅速に対応してくれるサポート窓口があるかも確認してください。クラウドサービスを検討する場合は、システムの稼働率や過去の障害発生実績なども確認しておくと安心です。
勤怠管理システムを導入する場合のロードマップを3ステップで紹介します。
ステップ1.就業規則の見直しとツールの選定
ステップ2.初期設定からトライアル運用
ステップ3.本格運用と他システム連携
それぞれ詳しく見ていきましょう。
初期段階は、導入プロジェクトの土台を築く重要な工程です。最初のステップでは、導入の全体スケジュールを決定し、現状の働き方やルール、そして導入の目的となる課題を整理します。タスクとしては以下のようなものがあります。
●現状把握
●スケジュール決定
●労働条件の整理
●打刻方法の選定
●申請ルールの整備
●書類の準備
●ツールの選定
労働条件が記載された就業規則は、勤怠・給与クラウド設定の土台となるため必須です。従業員の雇用形態を確認するための雇用契約書も準備します。整理された働き方や目標に基づき、自社に合うツールを選定しましょう。選定の際は、トライアルがあるツールがおすすめです。
選定したツールへ必要な情報を設定し、従業員への周知徹底を図りましょう。試用期間を通じて運用上の問題がないかを確認します。勤怠クラウドの設定に必要な情報には以下のようなものがあります。
●就業規則と雇用契約書
●従業員の基礎情報(氏名、生年月日、従業員番号など)
●有給休暇の残日数
●労働時間や残業の種類(割増賃金の対象とならない残業、割増しになる残業、深夜労働など)
●従業員をシステムに招待するメールアドレス
給与クラウドを導入する場合は、基本給や手当、締め日・支払日、賃金台帳、扶養の情報、特別徴収をする場合の住民税の金額、社会保険・雇用保険の資格取得日や等級、そして給与振り込みに必要な口座情報も必要になります。
システム導入成功のためには、従業員への説明会が非常に重要です。ここを疎かにすると失敗につながりやすく、システムの利便性が損なわれてしまいます。運用ルールや操作方法を従業員にきちんと説明し、マニュアル(紙または動画)でも共有しましょう。説明が不足すると、申請漏れやエラーが多発し、管理者が修正に追われてしまいます。
トライアル期間は約1か月、従業員数が多い企業であれば2か月が目安です。トライアル中は、できれば現行のシステムと並行して稼働(並行稼働)させておきましょう。
トライアル期間を経て問題がなければ本格運用開始です。同時に旧システムは運用を停止します。次に、以下のような他システムとの連携を確立します。
● 給与計算システム
● タレントマネジメントシステム
● 会計システム
● プロジェクト管理システム
● 入退室管理システム
● PCログ管理システム
最後に、導入後の継続的な対応が求められます。クラウドシステムは頻繁にバージョンアップされ、機能が追加されたり、今までできなかったことができるようになったりします。管理者は、システムを有効活用し続けるために、継続的に勉強し続ける必要があることを留意しておきましょう。
本記事では、勤怠管理の目的から法的なリスクについてまとめました。法律に対応し、罰則を避けるためには、手作業やExcelによる属人的な管理では限界があることは明白です。特に、多様な働き方やテレワークに対応するためには、法的に義務付けられた「客観的な記録」を実現できる勤怠管理システムとPCログシステムとの連携が、今や必須となります。
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