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勤怠管理のミスによって企業に生じるリスクとは

勤怠管理とは、労働基準法などの法令遵守を目的に、企業が社員の出勤・退勤、休暇、欠勤などの勤務状況をきちんと管理することです。勤怠管理を怠るとどのようなリスクが生じるのか。勤怠管理のミスによりどんな不利益を受けるのかなどを説明していきます。


勤怠管理のミスはヒューマンエラーが多い

ヒューマンエラーとは、人間が原因で発生するトラブルのことです。勤怠管理のミスの大半はヒューマンエラー、人為的ミスです。単純な間違いが発端で大きなリスクにつながることもあります。
勤怠管理で実際にどんなヒューマンエラーが起きているのか、人事・労務部門、社員の視点で具体的に紹介します。

人事・労務部門で起こるヒューマンエラー事例

タイムカードの集計時の記載ミス
月末にタイムカードの集計を手作業で行うため、転記ミスが起こりがちです。

有給休暇や休日出勤、振替休日、代休の管理ミス
有給休暇取得日数と残日数、休日出勤、振替休日・代休取得。よくチェックしているつもりでも、集計ミスはなかなか減りません。

紛失や廃棄のリスク
勤怠管理を紙(手書き)で行っていると、社内での承認作業中に紛失したり、誤って廃棄したりする恐れがあります。

賃金台帳、従業員名簿、出勤簿のデータを入れたUSBメモリーを落とす
週末自宅で作業しようと賃金台帳、従業員名簿、出勤簿のデータをUSBメモリーにコピー。
帰宅中にUSBメモリーを落としてしまったといったケースは少なくありません。

残業時間の集計ミス、残業代の計算ミス
特に紙の出勤簿で勤怠管理を行っている会社は、毎月の社員の勤務時間集計はもちろん、残業時間を集計して残業代を計算するのにも時間が掛かります。給与計算期間は、連日長時間作業となり、非効率なためエラー率も高まります。

休日出勤の確認漏れ
勤怠管理の集計を手作業で行っていると、大幅な手間と時間が掛かり、休日出勤の確認漏れなどを引き起こすことになります。

勤務体系や雇用形態の多様化による管理・集計(計算)ミス
近年、正社員・パート/アルバイト・契約・派遣など、雇用形態が多様化してきており、それに伴いフレックス勤務や短時間勤務、シフト勤務など勤務形態も様々で、勤怠管理が煩雑化し、計算(集計)ミスがいっそう起きやすくなっています。

社員が起こすヒューマンエラー事例

タイムカードの打刻忘れや打刻ミスなど
社員がうっかり打刻忘れや打刻ミスをすることが少なくありません。

不正打刻による不正請求
例えば、アルバイトを多数採用している企業では、アルバイト同士による不正打刻により、アルバイト代を不正に請求されるなどのリスクがあります。

残業時間、直行直帰の届出の不正申告
自ら申告する残業や直行直帰などは事後報告なので、不正な申告になりがちです。

勤怠管理のミスや誤りで起こりうるリスク

勤怠管理で把握する内容は、出勤・退勤時間、勤務時間、欠勤、残業時間、有給休暇、振替休日、代休などです。
勤怠管理を適正に行っていないと、以下のようなリスクが生じます。

残業代の未払い請求問題などが起こる
残業時間の管理をしっかり行っていないと、残業代の未払いが生じて社員から未払い残業代を請求されることになります。実際に起きた事例では、退職した社員が過去の未払い残業代を請求しました。会社ではその社員の勤務状況を把握しておらず、申し出に反論できないために延滞利息を付加して過去の未払い残業代を支払うことになりました。このような未払い残業代請求は近年急激に増えています。
東京労働局の「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成25年度)」)によると、東京労働局管内で「時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金が適正に支払われていない」と是正勧告や指導を受け、未払い残業代が100万円以上の遡及支払になったのは142企業で、総額22億円に上ります。1社当たり未払い残業代の平均支払金額は1,560万円ですが、1企業でなんと1億円を超える支払を行った事例もあります。適切に勤怠管理を行っていれば、このような予期せぬ法外な金額を支払う必要はないのです。

過労死、うつ病などのサインを見逃す
社員の心身の健康状態を管理することも勤怠管理の役割です。時間外労働や休日出勤などがどれほど行われているかを会社側が把握していなければ、社員の心身の疲労度などを察することができません。うつ病の前兆に気づかず、最悪の場合は過労死などの労災を誘引することもあります。

企業イメージダウン、業績悪化の可能性も
過労死で労災認定を受けると、企業は高額の損害賠償義務を負うこととなります。さらに新聞やテレビなどで取り上げられれば、企業イメージがダウンし、業績悪化につながる可能性もあります。過労死の労災認定が企業に与える影響はとても大きいのです。社員の心身状態の異変に全く気づかず、過労死した社員の遺族が裁判に持ち込んだ例も多々あります。

法令違反で罰則を受けることも
労働基準法第39条では「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間勤続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、勤続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」とあります。違反した企業には6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

厚生労働省が公開するブラック企業リストに掲載される
厚生労働省では毎月ブラック企業リストをWebサイトで公開しています。万が一掲載されることになれば、ブラック企業の烙印を押され、企業の信頼を失い、良質な人材の採用にも悪影響を及ぼす可能性もあります。

勤怠管理のミスによりどんな不利益を受けるのかについてご説明しました。
勤怠管理の目的は、労働基準法などの法令を守るために、企業が従業員の勤怠情報を正確に把握・管理することです。
そしてもう一つは、従業員の健康状態を管理することです。

従業員の勤務時間や勤務日数を把握し、必要に応じて業務の内容を調整したり、産業医の面談を受けさせたりするなど、適切な対応を取ることが大切です。

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