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「フレックスタイム制の見直し」で何が変わる?

働き方改革関連法の成立で、「フレックスタイム制の見直し」も行われました。新たなフレックスタイム制度は2019年4月1日からスタートします。法改正により、フレックスタイム制は現在とどのように変わるのか、どこが良くなったのか。新フレックスタイム制度の導入方法などポイントを解説します。


日本企業のフレックスタイム制の普及率

増加する共働きの世帯や自宅で親の介護など多様化するライフスタイルに応じてよりフレキシブルな働き方が求められています。
その答えの一つがフレックスタイム制です。実際のところ、日本企業ではどのくらいフレックスタイム制が普及しているのか、データで検証します。
内閣府のデータによると、平成27年のフレックスタイム制の普及率は下記のようになっています。

<日本の企業のフレックスタイム制の普及率>
・従業員1,000人以上の会社:21.7%
・従業員300人〜999人の会社:13.2%
・従業員100人〜299人の会社:6.9%
・従業員30人〜99人の会社:2.2%
(出典:内閣府男女共同参画局:フレックスタイム制を導入している企業の割合の推移)

普及率が最も高いのは大企業ですが、それでも20%余り。5社に1社の割合です。
フレックスタイム制の一番のメリットは労働者が自分の意志で始業時間や就業時間を自由に決められ、働き方を選択できることです。反対に現在のフレックスタイム制で最大のデメリットは、清算期間の上限が1ヵ月というところにありました。
新フレックスタイム制は、この点に着目して見直しを図りました。


ここが変わった!新フレックスタイム制-1

清算期間の上限を1ヵ月から3ヵ月へ延長

現行の清算期間の上限1か月の問題点

現行のフレックスタイム制では清算期間が1ヵ月です。
つまり翌月に延長できないので仮に1月の労働時間が法定労働時間の週40時間を超えていた場合、その超過時間は、時間外労働となり割増賃金を支払うことになります。
また、翌々月3月の労働時間が、法定労働時間に届いていない場合、現行では欠勤扱いとなります(年次有給休暇取得で調整)。

清算期間の上限が3か月になったメリット

新フレックスタイム制では労働時間を3ヵ月間で設定できるようになったのでこれまでの清算期間1ヵ月の場合のように時間外労働への割増賃金を支払うことはなくなります。
さらに1月に働いた法定労働時間の超過分を3月の足りない労働時間にプラスできるので欠勤扱い(年次有給休暇取得で調整)とはならなくなります。
このように清算期間が月をまたいでの労働時間の調整が可能になりました。これにより、たとえば繁忙期と閑散期を考慮して効率の良い勤務時間の設定が行えるので、
企業と労働者、どちらにもメリットをもたらせます。つまり、ワークライフバランスを考慮したものと言えるでしょう。


ここが変わった!新フレックスタイム制-2

清算期間が1か月を超える場合、届出が義務化


現在のフレックスタイム制は労使間の締結のみで所轄の労働基準監督署への労使協定届け出義務はありませんでした。
ところが、改正されたフレックスタイム制では、清算期間が1か月を超える場合、届け出が義務化となりました。労働基準監督署が新フレックスタイム制の遵守に厳しくのぞむということです。


ここが変わった!新フレックスタイム制-3

清算期間が1か月を超える場合、労働時間に上限を設定

働き方改革では、労働者の長時間労働を防ぐことも柱の一つです。
新フレックスタイム制で清算期間が3か月に延長されても、1か月ごとに平均労働時間が1週間あたり50時間を超える場合には、その月ごとに残業代(割増賃金)を支払わなければなりません。
1週間の法定労働時間40時間でしたら、1日平均の残業時間が2時間を超えると残業代を支払うことになります。

さらに、労働期間が清算期間より短い労働者にも割増賃金の支払いが義務化

清算期間が1ヵ月を超える場合、労働期間が清算期間よりも短い労働者が一週間当たりの労働時間が法定労働時間の週40時間を越えていたら、企業は超過時間分の労働に割増賃金を支払わなければなりません。

新フレックスタイム制の導入方法

導入する手続きはこのように行います。

STEP1.フレックスタイムを導入することを就業規則などに規定する

就業規則に始業・終業時刻を労働者の自主決定に委ねるなどと定めます。

STEP2.労使協定の締結

下記の事項を踏まえて労使協定を締結します。
・対象となる労働者の範囲
 すべての労働者なのか、特定の部署に限定するのかなど決めます。
・清算期間
 期間の長さと起算日を定めます。
・清算期間における総労働時間
 清算期間内の労働時間を規定します。この時間を平均した1週間あたりの労働時間は、法定労働時間と同等かそれ以下である
 必要があります。
 法定労働時間が週40時間/週の場合、清算期間における総労働時間は下記の法定労働時間の総枠以下でなければなりません。


清算期間法定労働時間の総枠
31日177.1時間
30日171.4時間
29日165.7時間
28日160.0時間
7日40.0時間

労働時間が上記の時間を超える場合、時間外労働扱いとなります。


・標準となる1日の労働時間

コアタイム(労働しなければならない時間帯)とフレキシブルタイム(労働者が選択できる出退勤時間帯)の設定をします。

STEP3.清算期間が1か月を超える場合、労使協定を管轄の労働基準監督署へ届け出る

フレックスタイム制のメリットとデメリット

フレックスタイム制の導入をお考えの企業様に改めてメリットとデメリットをまとめました。

メリット

〇ワークライフバランスの実現に貢献
 仕事とプライベートの調整がしやすいので育児、介護を行っている労働者も勤務との両立が可能。
 自己管理で仕事に取り組めるので個人の成長が期待できる。
〇人材の確保に貢献
 フレックスタイム制の導入は優秀な人材が集まりやすいなど、リクルート対策にも有効です。
 子育て、介護しながら仕事も継続できるので離職など流出を防げます。
〇不要な残業時間や休日出社の削減
 効率の良い仕事ができるので残業時間や休日出社の大幅な削減も可能。長時間労働を防ぐことは労働者の健康面にもプラスと
 なります。

デメリット

〇出退勤の時刻設定と業務時間の不一致
 たとえば工場は9時始業なのに、出社が10時と設定した場合、業務に問題が起きるおそれもあります。
 また取引先からの連絡や問い合わせも迅速なレスポンスが取れなくて社外・社内のコミュニケーションが円滑にいかなくなる
 ことも想定できます。
〇自己管理が不得手な労働者には適さない
 自己管理が苦手な労働者の場合、効率が悪くなる可能性があります。上司は管理や指導が必要となります。
〇管理部門の負担が増える
 労働者によって出退勤時間がまちまちなので清算が煩雑となり、管理セクションの負担増となります。
〇照明や冷暖房などの光熱費がかかる
 朝型の人もいれば、夜型の人もいます。フレックスタイム制になると固定された9時から5時のワークスタイルよりもバラバラの
 出退勤で在社時間が長くなり、その結果光熱費がかさむことになります。

おわりに

新フレックスタイム制の変更点や概要を説明しました。企業にうまく制度が馴染めば労働者にも経営者にもプラスとなります。
まさに、この記事をご覧になっている企業様の働き方改革を実現します。ただし清算期間が1ヵ月から3ヵ月になりますので、もしかしたら勤怠管理の面ではわずらわしさを増すかもしれません。
新フレックスタイム制が導入される前に勤怠管理システムの導入を再検討するキッカケと考えてみてはいかがでしょうか。

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