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働き方改革関連法の「長時間労働の是正」とは?

2018年6月29日に成立、2019年4月から施行される働き方改革関連法。その中で「長時間労働の是正」として行われる、労働時間に関する制度の見直しや勤務間インターバル制度など主要なものを取り上げ、狙いやポイント、内容を紹介。法改正で何が変わるのかを解説します。


「長時間労働の是正」の背景

過労死がそのまま「KAROSHI」で海外に通じるほど、日本は先進国の中でも労働時間の長い国です。
同時に年次有給休暇の取得率の低さは世界でもトップレベルです。働き過ぎ、休まない…。
このような現状から働き方改革関連法では「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現」、「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」に重点を置いています。
国連の社会権規約委員会が日本政府に過労死問題について勧告したのが2013年のことです。働き方改革でようやく本格的な「長時間労働の是正」が始まります。

働き方改革関連法で「長時間労働の是正」につながる規定

「長時間労働の是正」に主眼を置いた規定が、どのようなものかを具体的に述べていきます。

労働時間に関する制度の見直し

36協定に時間外労働の上限規制を導入

労働者の長時間労働を防止するために、いままで上限のなかった36協定に時間外労働の上限規制が導入されます。原則として時間外労働の上限が月45時間・年360時間(一年単位の変形労働時間制の場合は月42時間・年320時間)となります。

特別条項でも時間外労働は年720時間が上限

繁忙期など事情がある場合に認められる特別条項でも時間外労働は年720時間(月平均60時間)を上限としています。
特別条項ではさらに月45時間を上回る回数は年6回まで、1ヵ月100時間未満など規定しています。違反した企業、雇用主には半年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。


勤務間インターバル制度


勤務の終業と翌日の始業の間に一定の休息時間を設ける制度

勤務間インターバルとは勤務の終業時間と翌日の始業時間の間に一定の休息時間(インターバル)を確保して労働者の健康を確保するための制度です。
働き方改革関連法の成立により、平成31年度からはこの制度の導入が努力義務となります。これまでの不眠不休という不健康な働き方による過労死や心疾患などを阻止することが狙いで企業に導入を奨励しています。
この制度により労働者は休息時間が確実に持てることでより健康的に働くことができるようになります。

日本でも導入している企業がある

法律上のインターバル時間に関しての規定はまだですが、すでに導入している日本企業では休息時間(インターバル)を8時間、10時間など業務内容に応じて導入しています。
▼勤務間インターバル制度についての詳細は下記より閲覧ください。
https://www.nds-tyo.co.jp/e-asp/maga/06_M.html
「勤務間インターバル制度とはどんな制度?目的は?」

年次有給休暇の消化義務

年5日の有給休暇を与えることを企業に義務付け

働き方改革関連法では、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に、毎年、5日の有給休暇を与えることを企業に義務付けました。
年次有給休暇の消化がなぜ強制的になったのか。それは日本人の有給休暇取得率の低さにあります。
厚生労働省の調査では労働者の年次有給休暇の取得率は2000年以降50%以下と世界でも最低ランク。年次有給休暇を1日も消化できない労働者は16.4%(2010年時点)もいるそうです。

正社員だけでなくパートタイマー、アルバイトも対象

正社員からパートタイマー、アルバイトまでが対象となります。2019年4月以降、年間最低5日は労働者に休暇を与えないと労働基準法違反となり、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が課せられます。
▼有給休暇5日取得義務化についての詳細は下記より閲覧ください。
https://www.nds-tyo.co.jp/e-asp/maga/05_M.html
「有給休暇の取得が義務化へ。企業がすべき対応」


中小企業の残業代割増率の引き上げ

50%以上の残業代割増率、大企業では実施済み

2010年施行の労働基準法改正により1か月60時間を超える時間外労働に対しては、50%以上の率の割増賃金の支払いが義務化されています。これまでは大企業対象で中小企業は猶予されてきました。中小企業は残業代の割増率が25%でした。

2023年4月1日以降実施される

しかし働き方改革関連法により中小企業への猶予措置が廃止され、50%以上の率の割増賃金の支払いが義務化されました。2023年4月1日以降適用となります。割増賃金が未払いの場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

同一労働同一賃金の促進

基本は同じ仕事量、質ならば同じ料金

非正規労働者は労働者全体の約40%を占めます。しかし、非正規社員の待遇は、正社員の時給換算賃金の約60%程度にとどまります。同じ仕事をこなしている、同じ貢献度合いならば、同じ賃金を支払う。これが同一労働同一賃金です。

特に派遣労働者をバックアップ

厚生労働省は有期雇用労働者の均等待遇規定の整備を目指して派遣労働者に、
〇派遣先の労働者との均等・均衡待遇
〇同種業務の一般の労働者(正規労働者)の平均的な賃金と同等以上の賃金であること
など一定の要件を満たす労使協定による待遇の2点のうち、どちらかを確保することを義務化しています。施行予定日は、大企業が2020年4月1日、中小企業が2021年4月1日となっています。

労働者への待遇に関する説明義務が強化

いままではパートタイム労働者・派遣労働者には待遇内容などについてたずねられたら説明責任がありました。
今後はパートタイム労働者や有期雇用労働者、派遣労働者が企業に正規労働者との待遇差の内容を求めたときにも説明することが義務化されました。

高度プロフェッショナル制度の導入

成果主義の働き方、残業代は支払われない

高度プロフェッショナル制度は残業代ゼロ法案、ホワイトカラー・エグゼンプションとも言われています。年収1075万円以上の金融ディーラー、アナリスト、コンサルタント、研究・開発などの専門職を対象に、1日8時間、週40時間の法定労働時間の規制から外し、仕事の進め方を労働者の裁量に任せ、時間ではなく成果で判断される自由度の高い働き方です。残業代や深夜・休日手当は支払われない制度です。

過剰労働対策も講じている

働き過ぎの防止策として週40時間の法定労働時間を上回った部分が月100時間をオーバーしたら医師の面談を受けるなどの策が義務化されています。

産業医・産業保健機能の強化

健康リスクやメンタルヘルスの不調などが問題

労働者にとって過重な労働時間が要因となる健康リスクやメンタルヘルスの不調などが大きな問題となっています。
2015年12月労働安全衛生法が改正され、企業でのストレスチェックが毎年1回以上の義務となりました。

企業に要求される産業医の整備

それに続いて働き方改革関連法では改正労働安全衛生法が成立。産業医と産業保健機能が強化されるようになります。
企業は産業医が労働者からの健康相談に対応できる体制整備を確立することが求められます。また企業は産業医に労働者の健康管理に不可欠な情報の提供も義務付けられました。
常時50名以上の労働者のいる事業場では選任義務がある産業医の果たす役割は大きなものとなります。2019年4月から実施されます。

まとめ

企業では働き方改革関連法対策に取りかからなければならない時期を迎えています。
働き方改革関連法のうち「長時間労働の是正」に関するものを紹介しました。ご理解いただけたでしょうか。
時間外労働の上限規制の導入により長時間労働が防げるのか。同一労働同一賃金の促進で非正規社員の待遇は良くなるのか。
遠慮しないで年次有給休暇が取れ、ワークライフバランスの充実が図ることができるのか。
「長時間労働の是正」は、スタートラインに立ったところです。働き方改革の実現には国と企業が歩調を合わせて推進することです。

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