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短時間正社員制度の導入で得られるメリット

ライフスタイルが多様化する現在、就業に対する意識も従来とは大きく変化しつつあります。そんな中、多様な働き方を実現するための取り組みの一つとして注目されているのが短時間正社員制度です。
国が導入を推進する短時間正社員制度とはどのようなものなのか、制度の導入によりどのようなメリットが期待できるのかなどを知っておきましょう。


短時間正社員制度とは

短時間正社員とは、フルタイム正社員よりも短い勤務時間や少ない勤務日数で正社員として雇用されて働く人のことを言います。

厚生労働省が短時間正社員について情報提供を行う支援サイト「短時間正社員制度導入支援ナビ」では、短時間正社員を以下のように定義しています。

フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員であって、次のいずれにも該当する社員のことを言います。

①期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
②時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等
※フルタイム正社員…1週間の所定労働時間が40時間程度(1日8時間・週5日勤務等)で、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)
 を締結した正社員

短時間正社員制度とは、企業がさまざまな人材を短時間正社員として雇用し、活躍してもらうための仕組みのことです。
これまで多くの企業では、正社員はフルタイムで働くものであるのが一般的でした。このため、短時間正社員として雇用するための仕組みがまだまだ整っていない現状があります。

そこで、正社員雇用促進策の一つとして、国が企業に対して短時間正社員制度の導入を推進しているというわけです。

短時間正社員として活躍が期待される人材とは

現在の日本社会は少子高齢化が進み、労働力人口が減少しつつあります。企業は、これまでの「フルタイム勤務が可能な人材」以外にも目を向け、意欲や能力の高い人材を積極的に活用していく必要があるのです。

短時間正社員として活躍が期待される人材として、例えば以下が挙げられます。

・育児のためフルタイム勤務が難しい人
育児休暇後、職場復帰したいものの、まだ小さい子どもを育てながらフルタイムで働くのは現実的に難しいという人は少なくありません。短時間正社員制度により、子育てと仕事の両立を支援し、出産や育児のための離職を防止することができます。

・介護のためフルタイム勤務が難しい人
高齢化が進む昨今、親族などの介護のためにフルタイム勤務が難しくなり離職せざるをえなくなる人も多いです。短時間正社員制度を適用することで、介護と仕事の両立を支援し、介護のための離職を防止することができます。

・メンタルヘルスの不調でフルタイム勤務が難しい人
近年、うつ病などメンタルヘルスの不調で休職する人は増加傾向にあります。休職からの復帰が期待されますが、調子が万全ではない場合フルタイム勤務は難しいケースも多いです。このような場合に短時間正社員制度を適用することで、時間をかけてスムーズに職務に復帰してもらうことが期待できます。

・仕事以外の活動に時間をかけたい人
ライフスタイルの多様化や、求められる能力の高度化などから、自己啓発や能力開発、ボランティア活動への参加などのニーズが高まっています。しかしフルタイムで働く正社員の場合、こうした活動に時間を割くのは難しいという現状がありました。短時間正社員制度を活用することで、正社員として仕事をしながら仕事以外の活動に参加するといったことも可能になります。

・ワークライフバランス実現のためにフルタイム勤務を避けたい人
ワークライフバランスに対する意識が高まる中、育児や介護などの事情以外にも、「フルタイムでは働けない、働きたくない」という考えの人も増えています。こうした層に対し短時間正社員として募集することで、能力や意欲の高い新たな人材を獲得できる可能性が高まります。

・短時間勤務を希望する高齢者
60歳以上の労働者には、日数が少ない、1日の勤務時間が短いなど短時間勤務を希望する人が多いです。こうした希望に応じて短時間正社員制度を適用することで、専門性や生産性の高い高齢者の効果的な活用が可能になると考えられています。

短時間正社員制度の導入で得られるメリット

企業が得られるメリット

メリット1:意欲や能力の高い人材の確保
仕事に対する意欲や能力が高いにも関わらず、事情によりフルタイム勤務ができない人材を確保できれば、有効的に活用することができるようになります。

メリット2:生産性の向上
短時間正社員制度を導入するにあたり、職場マネジメントの改善や業務効率化が進むため、結果として組織としての生産性が向上します。

メリット3:人材の定着
職場に対する労働者の満足度が高まるため、結果として意欲や能力の高い人材の定着が期待できます。

メリット4:関連法令などの改正へのスムーズな対応
労働契約法や高齢者雇用安定法など労働関係法令の改正にあたって、短時間正社員制度が導入されていればスムーズに対応が可能です。

労働者が得られるメリット

メリット1:ワークライフバランスの実現
趣味や余暇、仕事以外の活動に時間をかけられるようになるため、多様なワークライフバランスの実現が可能になります。正社員として働きながらも、時間にゆとりのある生活ができるのは短時間正社員制度の大きな魅力でしょう。

メリット2:キャリア形成の実現
短時間正社員として働くことで、派遣やパート、アルバイトなど非正規雇用ではなく、正社員としてのキャリアを形成することができます。育児や介護などのため、フルタイム勤務が難しくなる時期にも、正社員としてのキャリアを途切れさせずに短時間勤務が可能になります。

メリット3:処遇の改善
短時間勤務であっても、有給休暇やボーナス、社会保険、福利厚生など、正社員としての処遇を受けて働くことができます。また、長期的なスケジュールの仕事など、より責任ある仕事に携わる機会も増えるはずです。

メリット4:職場全体の長時間労働の解消
短時間正社員制度を導入するために、必然的に職場マネジメントの改善や業務効率化が進むこととなります。結果として、職場全体として長時間労働が改善されるケースが多くなると考えられています。

社会的なメリット

メリット1:少子化問題への対策となる
昨今の少子化の理由の一つに、共働き家庭での子育ての難しさがあると考えられています。短時間正社員制度の導入が進むことで、仕事と子育ての両立がしやすくなることは、少子化問題の対策となることが期待できます。

メリット2:高齢化社会への対応が進む
社会の高齢化が進み、要介護人口が増加傾向にある近年、短時間正社員制度の普及は仕事と介護の両立を支援し、高齢化社会への対応策の一つとなると考えられます。

メリット3:労働力人口減少への対応が進む
女性や高齢者などが正社員として活躍しやすくなることで、少子高齢化による労働力人口の減少への対策となります。

メリット4:経済環境の改善につながる
多くの企業が意欲や能力の高い人材を登用する選択肢が増えることにより、企業競争力が向上し、経済環境の改善が期待できます。

まとめ

短時間正社員制度について、概要と導入することで得られるメリットをお伝えしました。
短時間正社員制度は、労働力人口が減少しつつある現代にあって、企業が人材を確保、活用するために役立つ制度です。
また企業だけでなく、労働者および社会全体にもメリットが多い制度であると言えます。
これから多くの企業で、短時間正社員制度の導入が進められていくことでしょう。

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