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有給休暇取得を促すための方法とは?

働き方改革関連の法改正により、2019年4月から使用者は労働者に年5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。労働者に有給休暇の取得を促し、確実に取得してもらうためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。義務の内容と合わせてしっかりと確認しておきましょう。


年5日の年次有給休暇の確実な取得とは

有給休暇とは、賃金が支払われる休暇日のことを言います。使用者は一定の要件を満たしたすべての労働者に対して年次有給休暇を付与することが労働基準法第39条によって義務付けられています。
これまで、年次有給休暇を定められた日数付与することについては、使用者に義務付けられていましたが、付与した有給休暇を労働者に取得させることについては使用者に義務はありませんでした。しかし、実際には付与された日数に対して有給休暇を取得する日数は少ないケースが多く見られます。そこで、働き方改革関連の法改正にともない「年5日の有給休暇を労働者に取得させること」が使用者に義務付けられたのです。
対象となる労働者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者となっています。年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、最低5日間は有給休暇を取得させなければならないのです。

有給休暇の取得を促すための方法は?

有給休暇の取得率が低くなる原因

労働者に付与される有給休暇は本来、すべて取得されるべきものです。しかし、実際には平成29年の年次有給休暇取得率は51.1%となっており、高いとは言えません。なぜ有給休暇の取得率が低くなってしまうのでしょうか? そこには、労働者の有給休暇取得に対する「ためらい」が影響していると考えられます。
厚生労働省が行った「働き方・休み方改革の取組及び仕事と生活の調和の実現に関する調査研究」アンケート調査によれば、有給休暇の取得に対して「ためらいを感じる」と回答した人は21.4%、「ややためらいを感じる」と回答した人は31.2%に上り、有給休暇の取得にためらいを感じる人が過半数を占めることがわかっています。ためらいを感じる理由としては「みんなに迷惑がかかると感じる(62.6%)」「後で多忙になる(43.2%)」「職場の雰囲気で取得しづらい(28.4%)」「上司がいい顔をしない(22.5%)」などが上位に挙がりました。
有給休暇の取得を促すには、まずは従業員のこうした「有給休暇取得に対するためらい」を理解したうえで、ためらいなく取得しやすくするための工夫が必要だと言えるでしょう。

有給休暇取得を促すための3つの方法

方法1:基準日に年次有給取得計画表を作成する
先述のとおり、上司や同僚に気を使って有給休暇の取得をためらう労働者は少なくありません。職場の人に気兼ねなく有給休暇を取得できるようにするために有効なのが、年次有給休暇取得計画表を作成し、労働者ごとの有給休暇取得予定を明示する方法です。
年度別や四半期別、月別など一定期間ごとに、従業員それぞれの有給休暇取得計画表を作成し、予定を明らかにさせるようにします。職場内で各人の休暇取得時季や業務進行をあらかじめ調整することができるため、有給休暇を取得しやすくなる効果が期待できます。

方法2:使用者からの時季指定を行う
2019年4月から、使用者が労働者に年5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。有給休暇の取得が5日未満の労働者には、使用者が時季指定を行って有給休暇の取得を促す必要があります。時季指定のやり方については、以下のような方法が推奨されています。
・基準日から一定期間(半年など)経過した時点で、有給休暇の請求日数・取得日数が5日未満となっている労働者に、
 使用者から有給休暇取得の時季指定を行う。
・過去の有給休暇取得実績が著しく少ない労働者には、労働者が計画的に有給休暇を取得できるよう、基準日に使用者
 が時季指定を行う
労働者からの有給休暇請求を妨げず、効率的に取得管理を行うことが重要です。

方法3:計画的付与制度(計画年休)の活用
計画的付与制度(計画年休)とは、就業規則と労使協定によって有給休暇を計画的に付与することを言います。例えば、夏季休暇や年末休暇の前後に計画年休を組み合わせて大型連休としたり、本人や家族の誕生日・結婚記念日などを「アニバーサリー休暇」として個別に有給休暇を計画付与したりといった例があります。
計画年休を導入することで、労働者がためらいを感じずに有給休暇を取得できるようになるため、取得率の向上が期待できます。また、使用者は労務管理がしやすくなり、計画的に業務運営を行えるようになるでしょう。

「年5日の年次有給休暇の確実な取得」の概要と、有給休暇の取得を促すための具体的な方法についてご説明しました。こうした方法と合わせて、有給休暇の取得を前提とした業務体制の整備や、取得状況の管理なども重要となります。企業全体で有給休暇を取得しやすい環境づくりに取り組んでいきましょう。

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