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働き方の実態把握

働き方改革の一環である「労働安全衛生法」の改正により、2019年4月1日から企業は従業員の労働時間を客観的に把握しなければならなくなりました。この義務化によってどのようなことが変わったのでしょうか。
事業者は、法令違反とならないよう改正の内容を正しく理解しておく必要があります。ここでは、改正内容についてと労働時間の客観的把握の方法について詳しく見ていきましょう。


労働安全衛生法とは?

まず、「労働安全衛生法」とはどのような法律なのでしょうか。労働安全衛生法とは、一言で言うと、労働者を守るための仕組みです。とはいっても事業者だけが対象の法律ではなく、事業者と労働者の両者が守らなくてはならないもので、職場での労働者の安全と健康を確保し、働きやすい職場環境を作っていくためには欠かせない法律なのです。

この労働安全衛生法ができた背景には、高度経済成長期があります。それまでは労働基準法の一部として盛り込まれていましたが、高度経済成長によって労働環境が大きく変化し、労働災害による死亡者が毎年6,000人を超えるという深刻な事態を引き起こしたため、昭和47年にこの法律が制定されることとなったのです。

企業がこの労働安全衛生法を遵守することによって、多くのメリットも見込めます。例えば、従業員に快適な労働環境を提供することにより離職率が下がって人手不足が解消したり、従業員のモチベーションが上がることで生産性も上がっていきます。
作業管理や教育がしっかり行き届けば無駄なコストも削減することができるかもしれません。
このように労働者の安全を守ることが会社の未来へと繋がっていくのです。

改正前と改正後の変化

政府が進める働き方改革により、2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行され、労働安全衛生法も改正されました。
その内容としては、

・時間外労働の上限規制
・年次有給休暇の確実な取得
・労働時間状況の客観的な把握
・雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
・長時間労働者に対する産業医による面接指導の強化

などがあります。

これまでは勤怠把握の基準などが曖昧であったため、手書きの出勤簿など自己申告制で勤怠管理を行っていた企業も多く、それでは企業側からの指示あるいは労働者側の判断によって不正の申告がなされることがあると懸念されていました。
しかし改正後はこれらの不正が行われないように、客観的な労働時間の把握が必要とされるようになったのです。

では、この従業員の労働時間の客観的把握の義務を万が一違反してしまった場合はどうなるのでしょうか。この把握義務自体には罰則はありません。ですが労働時間の把握ができていないと、その他の時間外労働の上限規制や年次有給休暇の確実な取得といったルールも守れない可能性が出てきます。

そして、時間外労働の上限規制には「残業時間の罰則付き上限規制」というものがあり、把握義務を怠った結果この上限を超えてしまった場合には6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されることがあります。
こういった問題を発生させないためにもしっかりと勤怠管理をして、労働時間を把握しておかなければなりません。

さらに、こうして把握した労働時間の記録内容は、3年間保存しなくてはならないという義務もあります。
労働基準法第109条で”使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。”と定められており、その他労働関係に関する重要な書類の中にタイムカードが含まれているのです。

この保管義務を怠った場合にも30万円以下の罰金が課せられることがあります。
また、この保管期間は今後5年に伸びる可能性があると言われています。
会社を守るためにもこれらの法律はしっかりと遵守していきましょう。

労働時間の客観的把握の方法

そもそも、把握するべき労働時間とはどこからどこまでを指しているのでしょうか。労働時間としてみなされるのは、使用者の指揮命令のもとに置かれている時間のことです。実際に業務を行っている時間だけでなく、着用を義務付けられた所定の服装への着替えや業務終了後の清掃時間、指示があった場合にすぐに対応しなければならない待機時間、参加が義務付けられている研修や教育訓練なども含まれます。

次に対象となる労働者ですが、パート・アルバイト、派遣、契約社員、管理職といった雇用形態や役職等に関わらずすべての労働者の労働時間を把握しておかなければなりません。今までは対象に入っていなかった管理監督者やみなし労働制が適用されている労働者なども対象となるので注意が必要です。

では、具体的に労働時間の客観的把握のやり方を見ていきましょう。労働時間を客観的に把握するためには、タイムカードやICカード、パソコンを使った記録が挙げられます。使用者が現認するという方法もありますが、これは効率が悪いためあまり現実的とは言えません。

企業は、これらの中から自社の職場環境にあった最適な方法を選択する必要があるのです。ただし、客観的な方法による労働時間の把握が難しい場合には、やむを得ず自己申告による方法が認められる場合もあります。

現在多くの企業が採用しているのは、タイムカードやICカードによる打刻、クラウド型勤怠管理システムなど。近年では指紋認証なども取り入れられてきています。中小企業を中心に、まだまだタイムレコーダーを使用しているところが多いと思いますが、ICカードや指紋認証などを取り入れることでタイムカードのように誰でも押すことができるわけではなくなるので、より正確な勤怠管理ができるようになります。


〜「e-就業」による労働時間把握の方法〜
e-就業を使うと、様々な方法での勤怠管理が可能になります。
ICカードによるタイムレコーダーやパソコン・スマートフォンを使っての記録、手のひらの静脈認証、入退室時間による記録など選択肢の幅が広がるので、より自社の環境に合ったスタイルで労働時間を把握することができるようになります。

また、パソコンのログオンやログオフ情報を記録するためのツールである「ez-PCLogger」と連携させることによって、このデータ自体を就業時刻として記録することもできますし、自己申告された労働時間との乖離を簡単にチェックすることもできるようになるのです。

まとめ

労働時間の客観的把握の義務化は始まったばかりで、まだ しっかりとシステムが構築できていない企業もあるかもしれません。
現在のやり方であっているのかどうか不安な場合には、専門の機関で相談することもできます。
もしわからないことがあれば、地域の労働基準監督署や都道府県の労働局、または弊社でも、ご相談を承っております。
労働時間をきちんと把握することは、会社のため、従業員のためにとても重要なことです。
より効率よく労働時間を把握するために、適宜それぞれの環境に合った勤怠管理システムを見直しながら、従業員が働きやすい環境づくりに努めていきたいですね。

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