1.つながらない権利とは
(1)背景等
日本ではなじみのない権利にはなりますが、西欧では権利として明文化され、つながらない権利の行使に対する不利益取扱いの禁止等を定めている国があります。
(参考サイト:「厚生労働省 労働条件分科会(第204回)資料2 労働時間法制の具体的課題について(51ページ)」)
日本においても、「テレワークの適切な導入及び実施に促進のためのガイドライン 4(1)」において、「メール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価ではない。」と定めております。
原則、労働契約上、私的な時間帯に使用者が労働者に業務命令をする権利はございません。
ただし、昨今のテレワーク勤務やモバイル勤務等により、私的な時間帯にも使用者・顧客と労働者がつながり易くなっており、明確な業務命令がなくても、労働者が社用メール等を対応することが多くなっております。
ワークライフバンス、労働時間管理、未払残業、労働者の健康等の観点からも放置することができない状況となっていることから、法制化が検討されているものと思われます。
(2)現状のリスク
使用者側:ストレス過多による安全配慮義務違反、労働時間管理不備と未払残業、緊急性の低い連絡等によるハラスメント問題、休養不足・ストレスによる社員の生産性低下など
労働者側:ストレス過多による健康障害、家庭内不和など
2.企業が行うべき対応
(1)就業規則等の整備
所定労働時間以外、所定休日、休憩時間などの労働時間以外の時間に、原則連絡・業務指示の禁止や、メール等の送信禁止、つながらない権利行使による不利益取扱いの禁止などを明記することが考えられます。
(2)緊急時対応のルール化
原則禁止とはいっても、緊急時の対応も不可となると事業運営に支障をきたす恐れがあることから、「緊急時」の定義を明確にし、限定した緊急時対応を就業規則に明記することが必要です。
また、顧客や取引先から勤務時間外に連絡が入る場合の対応方針についても、あらかじめ社内で整理しておくことが望まれます。
(3)モバイル端末の使用制限等
モバイル端末等の労働時間外の使用制限や、チャットの通知オフ機能、メールの予約送信機能を推奨・活用、労働時間外の社内システムへのアクセス制限等の対応が考えられます。
(4)管理職へのマネジメント教育
勤務時間外の連絡が常態化している職場では、上司の意識やマネジメント方法が大きく影響しています。管理職に対して、労働時間管理や安全配慮義務の観点から適切な業務指示の方法について教育を行うことが必要です。
なお、制度やルールを整備するだけでは十分とはいえません。勤務時間外の連絡が常態化している職場では、業務量や働き方そのものを見直すことも重要となります。
3.おわりに
労働時間以外の私的な時間は、労働者の自由にできる時間です。労働者の権利を守るためではなく、企業を守るために必要な制度といえます。
労働者の私的な時間を利用した犠牲をもとめる企業ではなく、つながらないことによる「働きやすい企業」を目指すことにより、生産性の高い働き方を目指し、優秀な人材の離職を防ぐことにもつながるのではないでしょうか。
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