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【令和4年10月1日施行】
産後パパ育休をはじめとする育児休業法の改正について (第2回)

前回では産後パパ育休の概要について解説いたしました。
今回は実際の取得例および具体的な実務面での解説を行います。


2. 産後パパ育休の取得例

産後パパ育休の取得例

厚生労働省 | 「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説」

(厚生労働省 | 「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説」)

図のように、産後パパ育休は、断続的に2回までの分割取得が考えられます。
なお、子の出生後8週間以降から1歳までの育児休業については、夫婦それぞれで分割して2回まで取得することができます。
補足となりますが、1歳以降の育児休業については開始時点が柔軟化されたことにより夫婦が交代して取得できるようになりました。
ただし、父と母の交代のタイミングは、一つの育児休業として継続していることが求められているため、空白期間が生じないように考慮する必要があります。
父と母で育児休業期間が重複することは問題ありません。

3. 休業中の就業に係る労使協定について

産後パパ育休中は、労使協定を締結している場合に限り、就業が認められます。
なお、休業中の就業日は労働日となるため、年次有給休暇の取得が可能となります。

次の①~④が就業に至るまでの一連の流れとなりますが、労使間のやり取りが非常に煩雑になっています。

① 労働者が休業中の就業を希望する場合、産後パパ育休の開始予定日の前日までに以下を申出。
・ 就業可能日
・ 就業可能日における就業可能な時間帯(所定労働時間内の時間帯に限る)と、その他の労働条件

② 事業主は、①の申出がされたときは、次に掲げる事項を労働者に速やかに提示。
・ 就業可能日のうち、就業させることを希望する日(就業させることを希望しない場合はその旨)
・ 就業させることを希望する日に係る時間帯や、その他の労働条件

③ 提示に対して労働者が同意する場合、その旨を休業開始予定日の前日までに書面等で事業主に提出。
④ 事業主は、上記の同意を得た場合に、同意を得た旨と、就業させることとした日時や、その他の労働条件を労働者に通知。

産後パパ育休中の就業は、あくまで特例的な位置づけとなるため、労働者の申出・同意に基づいて行われる必要があります。
そのため、事業主が提示した日時等で就業するよう労働者に強要した場合は、法律違反となる可能性があるため注意が必要です。


<休業中の就業日数等の上限>
休業中の就業日数等には、以下の上限があります。
・ 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
・ 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

「育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~」厚生労働省(2021年11月)

(「育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~」厚生労働省(2021年11月))

<労働者による申出の撤回>
同意した就業日等について、労働者は、以下の条件で撤回が可能です。
・ 産後パパ育休の開始予定日の前日まで
  労働者は、事由を問わず、同意の全部又は一部の撤回が可能
・ 産後パパ育休の開始予定日以後
  次の特別な事情がある場合に限り、労働者が撤回可能
  1.配偶者の死亡
  2.配偶者が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害その他これらに準ずる心身の状況により出生時育児休業申出に係る子を養育することが困難
  3.婚姻の解消等により配偶者が産後パパ育休の申出に係る子と同居しなくなった
  4.産後パパ育休の申出に係る子が負傷・疾病・障害その他これらに準ずる心身の状況により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になった

4. 10月以降の社会保険料免除について

育児休業中の社会保険料の免除の仕組みも従来と変更されます。現行においては、月末のみ休業をした場合であっても免除の対象とされていましたが、令和4年10月以降、次の要件を満たすことで、育児休業期間(産後パパ育休を含む)における各月の月給・賞与に係る社会保険料が被保険者本人負担分及び事業主負担分ともに免除されます。

① その月の末日が育児休業期間中である場合 ※従来と同様
② (1) 同一月内で育児休業を開始・終了し、その日数が14日以上(同一月内の休業であれば複数の休業日数の合算も可能)の場合
   ※「14日以上」の日数には、産後パパ育休の休業中の就業の仕組み
    (「3.休業中の就業に係る労使協定について」参照)により事前に事業主と労働者の間で調整した上で就業した日数は含まれません。
  (2) 賞与に係る保険料については連続して1か月を超える育児休業を取得した場合
   ※賞与保険料の免除の基準となる「1月超」については、暦日で判定されます。
    よって、産後パパ育休における就業日数等の就労は除かないものとされています。

【月給の社会保険料免除の例】

「育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~」厚生労働省(2021年11月)

(「育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~」厚生労働省(2021年11月))

5. 産後パパ育休に関する就業規則の見直し

今まで取り上げてきましたとおり、令和4年10月からは大きく育児・介護休業法が改正されます。
当然ながら、現行の就業規則等には産後パパ育休に関する申出方法や、適用除外、休業中の就労等については記載がないため、整理が必要です。
育児・介護休業法は、就業規則への記載だけでは足りず、労使協定の締結も並行して進めていくことが求められますので、次の具体的な項目を意識しつつ細やかな見直し作業が想定されます。

<就業規則(育児・介護休業規程)>
・ 産後パパ育休の適用除外の明記
・ 申出の手続き(分割、撤回、期間等)
・ 産後パパ育休中の就業に関すること

<労使協定>
・ 適用除外
・ 産後パパ育休に関する申出期間の緩和
・ 産後パパ育休中の就業について

6. おわりに

まずは、貴社の就業規則をはじめとする育児・介護休業規程等がどのように定められているのか、労使協定の締結状態について確認しましょう。 今回の改正で変更された制度内容を把握し、労働者の皆さまへの説明や相談体制の整備等を事前準備しておくことが、来たる令和4年10月に向けた課題となります。

今回の解説は以上といたします。
(前回、「産後パパ育休について ~第1回/全2回~」もご覧ください。)


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